それぞれの道2-14
ケージの中には、敷き詰められた新聞紙の切れっぱしに、小鳥が入るような木製の巣箱。
さらにはひまわりの種が入った器や給水器、そして“ソレ”が運動不足にならないためのクルクル回る回し車。
“ソレ”のために手厚い設備が用意されていたケージを見た瞬間、あたしは塁に見開いた目を向けて叫んだ。
「ちょ、ちょっと塁! これは無理、絶対無理!」
「頼むって、5日間だけだから」
「だって、家にはメイがいるのよ!」
「大丈夫だって。ケージから出さなきゃいいんだし、お前の部屋にカギかけてればあのバカ猫も入って来ねえだろ」
「ダメだって、もし何かあったら大変でしょ!
大体何で猫飼ってる家にハムスターなんて預けようとすんのよ!」
寒いのか、プルプル震えながらケージの隅で居心地悪そうに踞る一匹のハムスターを視界にとらえながらあたしは、必死で首を横に振っていた。