あたしは、あたし。-1
あたしはきっと、この紅い瞳の男を知ってる。
そして、暢気な笑顔であたし達を見てる、あの銀髪の男も。
「ぁあああっ!! あぁあああっ!!」
下から深く激しく突き上げられ、あたしの体は跳ねあがりそうになる程の快楽と、肌がぶつかり合う衝撃とでぐらぐらと頭が揺れる。
(あぁ…この男は…、あたしは…なんだっけ…?)
揺れる体を支えようとする自分の腕が視界に入る。
あたしの体…透き通るような水色。
腕や足には、まるで魚みたいな青い鱗が光ってる。
振り乱れる髪も青い。
「ぁぁ…っあ、あたし…は…なんなの? お前は…ああっっ!! なんな…の!」
喘ぎ混じりで男に尋ねると、
「…自分で思い出せ。そうでなきゃ意味がない」
「ぁあああっ!! いやあっ! 激しっ、ぁああ!!」
男は少し苦しそうに顔を歪めながらも、あたしをじっと見つめて小さな笑みを浮かべて、責めの手をどんどん強めてくる。
「…れちゃう…、ぁあ…っ! 気持ち…ぃ…、ほんとに…こわれ…ちゃう…ょ
突き上げられる深さに快感が一気に沸き上がり、足がガクガクと震えだし、あたしの中が激しく収縮して、男の肉の棒をくわえこみ、離すまいと悲鳴をあげるような感覚に襲われて、
「おねが…ぃ…、ぁあああっ!! ぃっ…ぁぁ…」
体が激しく熱をあげて震える。
一緒に…。
一緒に…イキたいよ…。
男の紅い瞳を見つめたら、目からまた、ぽたぽたと水が零れ落ちた。
「お前が欲しいものはなんだ!」
男は起き上がり、あたしを激しく抱き締め突き上げながら、叫んだ。
(あたしの欲しいもの…)
『オマエガ テニデキルモノナンテ、モウナインダヨ!!』
「イヤァアアアアーーッアアアアーー!!」
『オモイダセ…クルシミヲ!! ウラメ!! スベテヲウラミ!! オニニオチロ!!』
「お前が望むものはなんだ! 三神環!!」
(みかみ…たまき…)
そうだ。あたしは…。
『オチロ!! オチロ!! オチロ!!』
頭の中に響く声にあたしは、
「さっきから、ギャーギャーうるせーんだよ!!」
『ア"アアアアアアアーーー!!』
お腹の底から腹立たしさを集めて叫ぶと、あたしの体を纏う冷たい青鱗が弾け飛び、背中から、何かが剥離して体から抜け出す感覚がした。あたしは振り返り、黒い霧の人型のソイツをふん掴み、
「いいか! あたしが欲しいもの、望むものは、お前がさっきから煩くあたしに吹き込もうとする、怨みや人を呪う事でも喰らう事でもねーんだよ!」
恫喝したら、黒い霧はあたしからすっかり抜け出し、逃げようともがいた。
「あたしが、心から欲しいものは…」
あたしが心から望むものは、
黒い霧を睨みつけたら、体の奥から熱い何かが沸いてきて、あたしの瞳は心地よい熱を発し、紅蓮の焔を思わせる光を獲て、
『ア"アアアアアーーー!! ヤ、ヤメロ…』
「あたしが心から欲しいものは、あたしがあたしでいられる快感だよ!」
『ギャアアアアアアアアアアーーー!!!』
人型の黒い霧の胸に左手を突っ込んで、
「永久(とわ)に滅べ」
黒い霧を紅い焔で焼き消した。
「ひゅ〜…♪ 環ちゃん、やるぅ〜♪」
口笛混じりに、暢気な笑顔であたしに拍手を送る、
「黙れ、ど変態結月」
あたしは結月に鼻を鳴らして小さく笑んだ。
それから、あたしと交わりひとつに繋がりながら、あたしと同じように笑んでる紅い瞳の男…、刀鬼を見つめた。
「理解できたよ。あたしがあたしでいられる為の道が」
そう言ってやんわり笑うと、
「死の苦痛を知り、乗り越えて、死神の力を受け入れられるだけの魂の器があたしにあるか否か、試されてたってわけね?」
『苦痛の中にも楽はある』
刀鬼の言葉を思い出した。
確かに、あたしの死の記憶は痛くて苦しいものだった。
だけど、あたしは、そんな死の痛みを凌駕する程の快楽を獲て味わってる。
(なるほど、確かにあたしは淫乱だわ)
「…邪魔者は消したわよ? だから、あたしの中に、極上の気持ち良さを、刀鬼の力を目一杯ちょうだい」
刀鬼の頬にそっと手を宛がうと、
「言っておくが、オレは優しくないぞ?」
そう言って笑う紅い瞳は、言葉とは裏腹に暖かくて優しくて。
交わりの快楽の頂点を欲して、あたしの体は熱く疼いて止まらなくて…。
その後、何度も何度も、あたしは刀鬼の快楽の責めに悦び喘ぎ、何度も何度も絶頂して刀鬼の熱い精…、死神の生命力を体内に取り込んだ。