せめぎあう。-2
「欲しい…もっと…もっと…」
あたしは男に跨がり、精を吐き出して少し硬さを失いつつある肉の棒に、とろとろに濡れた秘部をあてがい、
「はぁぁ…ぁ…ん…」
腰をゆっくりと下ろして、熟れて疼き止まない肉の壁の中へと埋めた。
「環、お前、上に乗るのが好きなんだな…」
上気してふと笑んだ男に、
「ふん、あたしは縛られるのが嫌いなの」
そう言って……あたしは、笑った?
(なに?…今の…あたし…)
この男の瞳を見つめると、心の奥底で何かがブレる…。
『ノロエ、シボリトレ、ムサボリ、コロセ』
「ッァアアーッ!!」
頭の中に声が響くと、あたしの中に死に際の仰け反り狂うような凄惨な苦しみがフラッシュバックし、小さなブレはすぐに消し飛び、
『ソウダ、クルシイダロ? モット…ウバエ』
「モット…ウバエ…、ムサボリ、コロセ…」
声に呼応し、あたしの体から禍々しい黒い霧が溢れ、それに操られるように不乱に腰をふる。
満たされるような気持ち良さのない、ただ、精を搾り取ろう動くのみの単調な作業だ。
「モット…」
痛い。苦しくて寒い。だけど、魂の渇を解消すべくあたしはただ、動くしかなかった。
「なんだよ…、お前は、気持ち良くなりたいんじゃないのか?」
男は、あたしの頬を撫でて、優しく啄むようなキスをしながら、
「欲しいんだろ? 三神環。身も心も満たされるような、溶けるような極上の気持ち良さが」
「んっ…、ぁ…ふぁ…ん…」
もどかしく短い唇の触れ合いなのに、心がそわそわと擽られ、男の甘美な吐息混じりの囁きが、あたしの中から、じわじわと気持ち良さを這い上らせる。
「欲しいなら、オレを心ゆくまで味わえ。寒さや乾きが満たされるまで…味わい尽くせ…」
「…ん…っぁ…は…ぁ…ぁ……ん…ぁぁ…」
心で会話をするように、軽く啄むようなキスから、ゆっくりと熱を帯びながら高まり、溶け合ってしまうように深まってゆく口内の濃厚な絡み合いに、あたしの熟れた秘部の奥は、きゅうきゅうと甘くて切ない軋みを得て、蕩けてしまいそうになる。
ゆっくりと、深く腰をくねらせると、
「ぁぁ……、結月の言った通りだな…」
「ぁああっ!! んっ…ゃ…、もう…すご…おっきくて…ふかっ…はぁぁ…んっ…っ!!」
男は、先刻果てたばかりなのに、あたし中でみるみる硬さを取り戻し、
「こんなに気持ちいい中じゃ、結月程度の力なら持たせるのは難儀だな…」
「酷いなぁ…、てか、ケダモノの刀鬼と一緒にしないでくれる?」
あたし達の交わりを眺めて、銀髪の紅い瞳の男は暢気な笑い声をあげた。
(とう…き…? ゆ…づ…)
『ヨケイナコトハ、オモイダスナ! コイツノズイマデシボリト、ウバエ!』
「ァアアアアアアアーーーッ!! ウ…バ…ウ…」
痛い…よ…、寒いよ……。
苦しい…。助け…て。
「欲しい…よぉ……」
何が欲しいのかわからない。 だけど、欲しい、すごく、すごく欲しい…。
「環…」
「ぁぁ…ぁぁ……」
男のゴツゴツとした大きな手が、あたしの胸を優しく撫で包むように揉みながら、胸の突起に甘い痺れを与える毎に、あたしの秘部の肉壁はどんどん滑り、きゅうっとなり、男の肉の棒を離したくないとばかりに締まっていく。
「くっあっ…っ!! 凄い締まり具合だな…っ」
男は、苦悶しながらもあたしの胸を優しく弄んびながら、ゆっくりと深くあたしの奥を突きながら腰で弧を描いて狭い中を掻き回す。
「ぁあああっっ――っあんっ!! ぁぁ…ふか…ぃ…」
最奥を張りつめた熱い棒の先端で撫でるように掻き回されると、お互いの根本が擦れあい、あたしの敏感な芯芽が互いの恥毛に擦れあって、
「ぁぁ…ぁっ…ぁぁ…、気持ち…ぃ…」
お腹の奥がきゅんきゅんと疼く気持ち良さと、狭い陰部の中を苦しい程に押し広げて動く、熱くて固い男の肉の棒で、あたしの中からは卑猥なとろみがどんどん溢れて、動く度に、にちゃにちゃと淫らな水音が耳に響いて、
「ぁぁ…っ…、ぃぃ…のぉ…、もっ…と…ぉ…、激しく…ぅ…」
「いいのか? 壊れるぞ?」
少し苦しげな顔を見せながらも、小さな笑みを浮かべた男に、
「いいのぉ…! 極上の気持ち良さで、あたしを…ぁぁあんっ! 壊してっ!!」
掠れた喘ぎ混じりで男に懇願したら、体が激しく熱を帯びて、あたしの目から、ぽたぽたと水が零れ落ちた。
霞む視界の先には、切れ長の紅い紅い瞳。
冷たくて、優しくて強い。
「と…う…き…ぃ…」
『もう少しだ、オレを信じて身を任せろ、三神環』
低くて強い声が頭の中に響いた。