それぞれの道1-6
懐かしそうに目を細めてアルバムを眺める彼の横顔につられて、あたしも顔が綻んでしまう。
ああ、久留米さんのこんな表情一つですぐに機嫌が直るあたしは、なんて単純なんだろう。
でも、こんな自分は嫌いじゃない。
あたしは、胡座をかいてアルバムを見つめている彼の背中を思いっきり抱きしめた。
「じゃあ、久留米さんが寂しい時はあたしも飛んでいくね」
この先の甘い展開を期待して、あたしはそう言った……のに。
「いーや、大丈夫」
「……へ?」
久留米さんは振り返ってニッと笑うと、段ボールの中から銀色のフォトフレームを取り出した。
このフォトフレームは、久留米さんの車のダッシュボードの中にずっと入っていたやつだ。
大学生の頃の久留米さんと、親友の茂さんと、久留米さんが愛してやまなかった芽衣子さんの3人が写っている写真が収められていたそれ。
でも、そのフォトフレームの中は空になっていて、入っていた写真はフォトアルバムの中に収められている。
芽衣子さんからのメッセージが残されたその写真も、彼の歴史を作ってきた一部になったとあたしは思ってる。
今も瞼を閉じれば浮かんでくる茂さんと芽衣子さんの姿は、きっと今の久留米さんを見て笑顔でいてくれてる、そう信じながら。