それぞれの道1-30
驚いて彼を見れば、眼前には相変わらず不敵に笑う彼の顔が。
「見栄張るのは勝手だけどさ、俺の前くらいではそのままでいろよ」
「え……」
「バカでドジで、かわいこぶっても様になんなくて……目を半分開けて寝るわ、いびきはうるせえわ、料理は下手だわ、女らしさのかけらも全くないけど、いつも大口開けて楽しそうに笑って、元気で明るい、玲香のそんなとこが一番好きなんだ」
「……さりげなく悪口言いまくってない?」
「あれ、おかしいな」
クスリと笑う彼につられて、ついプッと吹き出してしまう。
散々暴言を吐かれても、たった一言の“好き”だけで機嫌が直るあたしは、ホントに単純だ。