それぞれの道1-29
するとなぜかクスリと笑う久留米さん。
「今さらカッコつけたって無駄なんだって。
9号なのも、腹が出てきたのもばれちまったんだから」
「……………」
「さらに言うなら、最近ムダ毛処理も手抜いてんだろ。腕とか脚とかチクチクするもんな」
「…………!!!」
彼の言葉にあたしはさらにダメージを与えられ、ゆでダコのようになった顔で固まってしまった。
太ったことならまだしも、ムダ毛について言及されると、顔から火が出るほど恥ずかしい。
ホント、この人は無神経。
でも久留米さんの言うことは当を得ているからこそ、反論できない。
プロポーズされて、涙ながらに返事して、指輪をはめる……そんな素敵なシチュエーションもあたしはやっぱり様にならない。
現実は、指輪が入らなくて、太ったことやムダ毛についてまで指摘され、かっこ悪いところを見られてばかり。
こんな現実があまりに情けなくて、悔しくて、涙がポロリとこぼれてきた。
それはこめかみを伝って、耳の中へ吸い込まれるように流れ落ちる。
プロポーズされるなんて一生忘れられない出来事なのに、こんな恥ずかしい展開、あんまりだよ。
ギリッと奥歯を噛みしめ、目を瞑っていると、ふと目尻のあたりに柔らかい感触が当たった。