それぞれの道1-24
一瞬、何を言われているのか理解できなかった。
でも彼の真剣な顔と紅潮した頬で、その言葉の意味を脳内が処理し始める。
彼の赤みがこちらにまで伝染してしまったあたしは、ようやく震えた声を喉から出すことができた。
「久留米さん……それって、同棲しようってことですか?」
一年我慢すれば、ずっと一緒にいられる。そんなことを期待しながら。
すると彼は黙って首を横に振って、ジーンズのポケットから小さな箱を出してきた。
紺色のビロードが張られたその小箱は、上が少し山のように膨らんでいる。
「これ……っ」
小箱に移した視線を再び久留米さんに戻すと、彼は黙って頷いた。
そしてあたしの手にそっとそれを乗せ、中を開けるよう目で促す。
これってもしかして……アレだよね?
震える手がそっとその箱を開いていく。
――そこには、小さなダイヤが3連になった、細いリングがキラキラ輝いていた。