それぞれの道1-17
バタンと玄関のドアが閉められる音がやけに部屋の中に響いた。
シンと静まり返った部屋には、エアコンの駆動音が耳鳴りのようにあたしの鼓膜を震わせる。
この部屋で一緒に過ごせるのなんて、あとわずかだと言うのに。
……久留米さんはやっぱりあたしの気持ちなんてわかってない。
フウとため息が出てきて、あたしはあの恐ろしい写真の入ったフォトフレームを手に取った。
ホントにホラーとしか言い様のない写真。
自分が見ても泣けるほど不細工な写真を、わざわざ飾るなんて理解できない。
それにさっきだって、あのままキスの一つでもしてくれると思っていたのに、それすらしてくれないで。
あたし、ホントに久留米さんに愛されてるのかな。
彼を信じられないというわけじゃないけど、こんな風に求めるものが得られないと、どうしても不安は隠せない。
塁や、今まで付き合ってきた男には、「お前の気持ちが重すぎる」って振られてばかりの過去があったから、特にそう思ってしまう。
久留米さんが、恋人らしい雰囲気が苦手なのはわかるけど、やっぱりあたしの好きの気持ちの方が比重が大きいんだと、ヒシヒシと思い知らされてしまった。
この分だと遠距離恋愛が始まっても寂しがるのはあたしだけっぽい。
写真の中のブスを見つめると、沸々怒りが沸いてきた。
仕事から疲れて帰ってきて、この写真に出迎えられた所で何が癒されるんだか。
「久留米さんのバカ野郎」
わざと大きな声で一人ごちたあたしは、フォトフレームをひっくり返して留め具をはずし始めた。
こんなふざけた写真、捨ててやる。
怒りにまかせて乱暴に台紙を取り出し、アクリル板を外す。
ペリペリと音を立てて剥がされた写真を手にした時、あたしはあることに気付いた。