ハーレム?な少年-3
さっきの態度が態度なだけに、何もいえないキョウカ。
「さあ行きましょう。こっちよ」
リンは三人にぺこりと挨拶した後、リズの後を追った。
「お館様…何を考えていらっしゃるのですか…」
風呂場へ向かう道中、リンはリズからこの屋敷について色々教えてもらった。
「まずこの屋敷はカミラの人間と侍女を合わせても男は君しかいないわ」
「え?でも、あの…」
彼女には娘がいたようだ。ということは…
リズはすぐにリンの言いたいことを察したようだ。
「?…ああ、夫は十年前に亡くなってるわ。今は私がカミラの当主になってるの」
伴侶の死について語っているのに、リズは何でもないことのように言った。
十年も経つとこうなるのだろうか?
「娘は三人いて、全員見たでしょうけど、始めに出迎えてくれたあの子がミレイ…長女よ。
キョウカと一緒にいたストレートロングヘアーの子がアイリス。次女よ。
そして三女がセミロングの赤い髪の子…カレン。まあ後で紹介するけどね。
あと、私は後妻だから血が繋がっているのはカレンだけなの。ミレイとアイリスは前妻の子。そんなの関係なく慕ってくれてるけどね」
リズの説明にようやくリンは納得した。
ミレイとリズは親子にしては、大分年が近い気がしたのだ。
「あと、侍女は全部で50人くらいいて、守衛やボディーガードも女性がしてるわ。最初は全員覚えるのは無理だと思うけど…あ、ここよ」
ようやく風呂場へ着いた。
「タオルや着替えは後で置かせておくわ。ゆっくり入ってきなさい。上がったら…そうね。食堂へ来てもらえる?玄関の左手奥に扉があったでしょう?そこが食堂だから」
「はい、分かりました」
そう言って、リンはリズと別れた。
カミラの風呂場は、まず脱衣場から広かったら。
十数人は軽く収容できるだろう。
身にまとうボロを脱ぎ、風呂場への扉を開けると、またもやリンは立ち尽くしてしまった。
軽く自分のボロ屋が収まる広さだ。
奥行きは一体何メートルはあるのだろうか…
そんな場所にいる自分を見て、母の、「幸せは絶対にやってくる」という言葉を、何故か思い出した。
場所は変わって食堂。
ここにはリズが呼びかけて三姉妹とキョウカ、今日屋敷で働いている侍女20人程が全員きていた。
「では義母さま。教えていただけるのでしょうね。なぜ、あのリンという少女を連れてきたのか」
そう言ったのはミレイだ。
「あなたも何言ってるの。リンは男の子よ」
「ええええ!?」
キョウカ達と同じリアクションをするミレイ。
それを見て、三人は(そう思うわよねぇ)と思った。
「まあ、あの子もまだ14才だって言ってたし、まだ若いから間違われても仕方ないのかな」
「あ、私年上だ♪」
そう言ったのはカレンである。彼女は現在16才だ。
「ま、まあ性別はこの際よしとしましょう。しかし何故貧民の子を?」
気を取り直して、問いただすミレイ。
「別に酔狂で連れてきたわけじゃないわ。あの子は使い方次第によってカミラに大きな利益をもたらしてくれると思ってね。
それにミレイ、貧民だ何だと区別していては貴女もまだ甘いわよ。
貴族でも使えない人間はたくさんいるんだから。逆に貧民でも使える人間はいる…リンのようにね。使える人間は貧民でも関係ないわよ。
…私を信じなさい。リンはカミラのためになるわ」
そこまで言われたら誰も反論できない。
リズがどれだけ思慮深く、頭の回転が早いか皆知っているからだ。