ハーレム?な少年-2
「君にはうちの使用人になってもらおうと思ってね。と言っても、ほとんど私付きの使用人だろうけど」
「え?…ええええ!?」
サラリと言われた台詞に絶叫するリン。
四大貴族の使用人になるなど、平民が叶えることはまずない。
孤児がなるなど奇跡が起きてもあり得ないのだ。
それを理解しているからこそリンは聞かずにいれなかった。
「ど、どうして僕なんかを使用人に?僕は…貧民なんですよ?」
「自分を卑下してはダメよ。貧民だろうと関係ないわ。路地であなたを見たときピンと来たのよ。この子は化ける…ってね」
言って、リンの頬を優しく撫でるリズ。香水の香りが漂ってきて、思わずクラッとくる。
それから程なくして、馬車はカミラの屋敷へと到着する。
三大貴族なだけあって、さすがに屋敷は庭からしてすでにとてつもなく広い。
「お帰りなさいませ、義母さま」
「ただいまミレイ」
馬車から出てくるリズを笑顔で迎えるミレイと呼ばれた女性。
次いで、馬車を出てきたリンを見て眉をひそめる。
「義母さま…その子は何ですか?」
「この子はリン・ナナミよ。今日からここで働いてもらうわ」
リズの紹介に、露骨に顔をしかめる女性ーーミレイ。
まあ、当然の反応だろう。
リンの格好は明らかに貧民街出身であることがわかる。リン自身ここにいることは場違いと思っているのだ。
「何のお戯れですか?」
「冗談じゃないわよ。…ああ、キョウカはいるかしら?この子をお風呂に入れてあげないといけないし、紹介しなくちゃ」
「キョウカならアイリスとカレンの傍にいるはずですよ。…でも義母さま、その子をキョウカに見せたら悲鳴をあげますよ」
「どうせ紹介するんだから。遅いか早いかよ。さ、リン、行きましょう。この時間だったらきっと書庫ね…」
「は、はい」
オドオドしながらリズについていくリン。
ミレイの視線が痛かった。
…数分後。
「きゃああああー!」
キョウカの悲鳴が広大な屋敷全域に響き渡った。
「ほら、やっぱり…」
ミレイはふう、と溜め息をついた。
「お館様!なななな何ですかその子は!」
リンをビシッ!と指さしながらカミラの侍従長、キョウカは声を張り上げた。
後ろにいるアイリスとカレンも驚いた顔をしている。
リズはキョウカのリアクションを気にした風もなく、
「今日からここで働くリン・ナナミよ。よろしくね」
と笑顔で紹介した。
「何でそんな女の子を!」
キョウカの言葉がリンにグサリと突き刺さる。
「あら?リンは男の子よ」
『ええええ!?』
リズの言葉にキョウカのみならず、傍観していたアイリスとカレンも驚いた。
(僕って…)
心の中で密かに涙するリンであった。
「それならなおのことです!なぜカミラ家に男を…!」
「これから必要と思ったからよ。大丈夫。この子以外増やすことはないから」
「しかしですね…!」
「キョウカ」
と、静かだが威厳のこもった声で名を呼ぶリズ。
「ここの主は私よ。分かってるわね」
「…は、はい!申し訳ありませんでした…」
すっかり恐縮するキョウカ。
それを見て、リズの顔に再び笑顔が戻った。
「分かればよし。ところで、お風呂使えるかしら?この子を綺麗にしてあげたいんだけど」
「は、はい。大丈夫です。私が案内しましょう」
「結構よ。あなたとリンを二人きりにしたら、行く途中にリンに何言うか分からないから」
「…………」