ハーレム?な少年-13
「そんなこと言って、ミレイ姉様も参加したいんじゃないんですか?」
「なっ…そんなわけないでしょう。何を言い出すのです」
「本当ですか?」
「本当ですっ」
アイリスの攻撃は続く。
「つまり姉様は、リンさんのことなど何とも思っていないんですね?」
「え…?」
「好きでもなんでもないんですね?」
好きに決まっている。しかし不器用なミレイは、ここで素直に言えるわけがなかった。
「と…当然です。なぜ私がたかが使用人ごときを好きにならなければならないのです」
その言葉を聞いて、アイリスはニヤリとする。
彼女はミレイの性格をよく理解していた。
それを踏まえて、リン争奪戦に先制パンチを与えたのだ。
カレンはアイリスのやり取りにただただ感心していた。
「気にしないでリンさん。ミレイ姉様はああ言ってますけど、私はリンさんのこと大切に思ってますよ」
「私もだよっ、リンくん!」
ミレイの言葉に自然と俯いていたリンに、アイリスとカレンは口々に言う。
ある意味、飴と鞭である。
リンは微かに潤んだ目をして、
「ありがとうございます…」
と呟いた。
その表情に三人の娘達は揃って、『うっ…』と悶えて胸を抑える。
特に一番ひどかったのは、リンの真正面にいて直接視線を交えたアイリスだ。
いつもの冷静さはどこえやら、アイリスはリンの手をガシッと握ると、そのまま出口までズンズンと引っ張っていく。
「あ、あの…?」
「リンさん、食事は後にしましょう。そんなことより、私の部屋で2人の未来を…じゃなくて、色々お話でもしましせんか?」
お話だけで終わるはずがないのは、彼女の爛々と輝く瞳が語っている。
背後では、
「アイ姉様またぬけがけー!」「アイリス、何をするつもりです!」
などと苦情が出ているが、当然アイリスは無視。
扉に手をかけようとした瞬間、向こうから開いてきた。
中に入ってきたのはリズとキョウカであった。
「あら?どこに行くのアイリス?」
「えっと…それは…」
突然の母の登場にすっかり理性が戻るアイリス。
「もう食事もできてるみたいね。早く食べましょう」
「は、はい…」
リズはそのままリンに近づき、彼の頬を愛おしげに撫でる。「お早うリン…昨日はよく眠れたかしら?」
「は、はい。おかげさまで…」
「おかげさま?クス…そう言ってくれて嬉しいわ…」
リズが昨夜の情事を言ってるのに気づき、顔を赤くするリン。
そんな2人のやり取りをミレイ達とキョウカは遠巻きに見ていた。
四人はリズとリンの昨日よりも親密な雰囲気を一目で見抜いた。親密というよりは恋人のような2人。
昨夜2人に何かあったんだと、四人とも確信する。
「さあ、早くしないとご飯が冷めちゃうわ。席に着きましょう」
リズの言葉で各々は椅子に腰をおろし始める。
リズとリンの関係を疑う女性陣の、微妙な空気を孕みながら食事が始まる。
勘の鋭いリズは彼女らの違う空気に気づいているが、割と鈍いリンはただ困惑しているだけだ。
彼のハーレムのようなそうでないような生活は、まだ始まったばかり…
続く…?