僕らは知り合う-4
(あれ…? なんか…、僕、ちょっとムカついてる…?)
頭の中で苛立ちがルグルと回り出し、気が付いたら真顔で小島を押し退けてた。
「酔ってるとはいえ、好きでもない男と、勢いだけでとかやっぱ良くないだろ…こういう事するの」
僕の言葉に小島は、
「こんな微々たる酒の量で酔ってなんかないわよ」
「は? じゃあなに? 単に僕をからかって楽しんでるってわけですか? 女の扱いもろくにわからない残念な奴に施しをくれてやるってわけですか?」
「は…?」
「は…? じゃねーよ! バカにすんな!」
「ちょっ…」
「僕はなあ、好きでもない奴に軽々しくこういう事する、 自分を大事にしないバカな女は嫌いなんだよね!」
自分でも、なんでこんなに怒ってるのかわからないけど 、でもなんだか頭にきて、小島に向かって盛大に怒鳴ってしまった。
小島は、数秒唖然とした顔をした後に、僕の左頬を思い 切りひっぱたいてきた。
「いっ…!!」
「軽い女じゃねーよ! あんたこそふざけんなだ! 勝手に一人で決めつけんじゃねーよ! バカヤロー!」
小島は、大声で怒鳴って、
「いい加減気付けよ! どんだけ私の事見ないで素通りすれば気が済むんだよ!」
瞳から大粒の涙を落として、僕に背中を向けてしまった 。
「あ…あの、ごめ…」
「どうせ悪いなんて思ってないくせに謝るな! バカ!」
「…だって…小島さん、わけがわからないよ…」 「私だってもう…わけがわからないわよ…」
小島は、肩を震わせて鼻をすすりながら、
「なんでこんな鈍い男に惚れちゃったんだか…わけがわからない」
「はい…? え? 鈍い男?」
呆けた声で尋ねると、
「あんたに決まってるでしょ! 遠山瑛士!」
小島の声は、はっきりと僕のフルネームを告げた。
「…え? …い、今…なん…て?」
状況が飲み込めずに、尋ね返した僕に、
「遠山瑛士が好きだって言ったんだよ! バカ!」
そう叫んで涙目で睨んできた。
「ごっ! ごめんなさい! って! えーーーっ!!」
びっくりし過ぎて今度は僕が叫んでしまった。
「なにその驚きかた! 超ムカつくっ! もう一発殴って やる!」
「ちょっ! 小島さんっ! ごめん! 頼むから落ち着い て!」
「やだ! 絶対許さない! 私の勇気返せ!!」
「小島さんっ!」
僕は、
「ほんとごめん! 頼むから…泣かないでよ…」
これ以上小島が泣いて暴れないよう、勇気を振り絞り胸に抱き締めた。
「…バーカ…」
つぶやくと小島は僕の胸にしっとりと体を預けておとな しくなった。