僕らは知り合う-3
余裕綽々とした視線を僕に流して言い放つ小島に、
「ええ、男ですよ? いや、つーかさ、小島さんて普段はしっかりしてそうに見えて実は結構隙だらけだよね? 夜通し男と公園に二人きりだってのに、そんな薄着でさ。しかも酒なんか飲んで身の危険感じたりなんかしないの?」
酒の勢いを借りて、言い返した僕に、
「はあ? どっから見ても草しか食ってなさそうな男にどうやって身の危険を感じろと?」
何も出来ないくせにといわんばかりに挑発的な瞳を僕に向けて、ニヤニヤと笑う小島を見て、
「く、草なんか食ってないから! 僕だってやるときはやる男だぞ!」
負けるものかと、小島に挑発的な笑みを向け返すと、
「へー…、じゃあ、見せてみてよ。そのやるときはやる男ってやつをさぁ〜」
何を言っても全く動じる事のない小島を見て悔しさが込み上げるのを感じて、僕は更に酒を喉に流して小島を笑み混じりに睨んだ。
…その余裕たっぷりの顔を恥じらいで染めてやりたいという気持ちが膨らんでるのは、間違いなく酒のせいだろう。
「やってやろうじゃないか…」
呟き、小島を引き寄せて、頬に手を宛がった。 しかし思った以上の柔らかな肌の感触に、急に動悸が激しくなり…。
小島は全くの無抵抗で僕を見上げて、ガッツリと大きく目を開けて行動を観察してる。
「…あ、あのね…、悪いけど目を閉じて貰えないか…な?」
至近距離で女性に真っ直ぐ見つめられるのは、非常に恥ずかし過ぎて、 思わず弱腰になり声が上ずってしまった僕を見つめて、
「ったくぅ…ほんとヘタレ君だなぁ…」
呟いた瞬間、小島の顔が急に近付いてきて、
「――っ!!」
「…ん…」
僕の唇は、しっとりとしてやわらかい感触と重なった。
…何が起きたんだ? ほんの一瞬だけ思考が現実逃避。しかし、逃避したくても 否応なしに伝わる唇の心地良い温かさや柔かさ、顔を撫でるくぐもった吐息や、甘い髪の香りからは逃れられない状態なわけで…。
「ん…っ」
「ん……ぁ…ふ…」
目を閉じて、心地良さそうに僕の頬を撫でながら、唇を離そうとしない小島にされるがままになってしまっている僕なわけで。
それが決して嫌な訳ではない。
女性から寄りかかられ、 キスされるなんて寧ろラッキーな状況じゃないかと思う僕がいて。
それから、もしこのまま勢いで押し倒して、更にいかがわしい行為へと発展したとしても、元々挑発してきたのは彼女だしな…なんて下世話な事も思った。
…てか、小島って誰とでも簡単にこんな事する軽い女だったのか…?