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BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

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−6−-5

―――まずいことになった。
彼が望んでいたはずの、女の顔をした椎奈を見上げながら、孝太郎は心中で舌打ちする。心が伴わないまま、体だけの関係を継続するなんてことにでもなったら、どうやって彼女への未練を断ち切れば良いというのか。
必死に、拒絶の言葉を紡ぎだそうとする彼の唇に、椎奈は人差し指でそっと触れた。
「……わかったんだ」
そう呟いた後、今まで彼女が彼に見せたことのないほどの優しく、愛情に満ちた顔をした。
「友達とか恋人とか、どっちも好きなことにはかわりないんだから、あたし的にそういう区分はどうでもいいよ。ただ、これからもずぅっと孝太郎と一緒に居たいってこと」
「え……」
凍りつかせようとしていた彼女への恋心が、再び熱を帯びてゆく。それと同時に、心臓の鼓動がどんどん速度を上げてゆく。まだ実感が湧かず、呆然と彼女を見つめている彼の唇に、椎奈はそっと口づけた。
「気付くのが遅かったけど、こういうこと、したいと思うのも孝太郎だけなんだって……」
恥じらいながら、椎奈は彼の頬を両手で包みこむと、こつん、と互いの額を押し付ける。じわじわと、彼女の重みと体温が、現実味を増してゆく。幸せな気持ちが膨れ上がって、どうにかなってしまいそうだ。
孝太郎は強く椎奈を抱き締めると、唇を押し付けた。彼女も自然にそれに応える。体勢を変えて、何度も何度も、様々な口づけを交わした。
「お前なあ……明日俺まで赤点になったら、責任取れよな」
「ああ。仲良く一緒に補習受けりゃいいじゃん」
椎奈は孝太郎の耳元に唇を寄せると、彼がずっと待ち望んでいた、特別な言葉を口にした。
その不意打ちに、彼の鼻の奥がツン、と痛くなり、目頭がじわじわと熱くなる。
「……ばーか」
うっかり泣きそうになってしまったのを気取られないように彼は瞬きをすると、冗談混じりにそう言いながら、お互い笑い合った。


こうなったからにはちゃんと親に紹介しなければ、ということで、椎奈は恥ずかしがる孝太郎の手を半ば強引に引っ張り、母親と妹の前で自分達が付き合うということを告白した。
「……あらあら、孝太郎くん。杏子ちゃんと付き合ってたんじゃないの?」
「そうなの、私、孝ちゃんに弄ばれて捨てられたの」
泣き崩れるような仕種をしてみせる杏子に、
「杏子!!!」
椎奈と孝太郎、2人の声が見事に重なる。
(ほんと、似た者同士の2人……)
杏子は心中で毒吐きながらも、心の整理はもうしっかりついている。こうして並んで手を繋いでいる2人の姿は、自然体でとてもお似合いだ。姉が幸せならば、それでいい。だが、自分が2人の後押しをしてしまったとはいえ、敵に塩を送ったままでは何だか悔しい。
「……でもー、お姉ちゃんの一番は私なんだよね?」
にっこりと、誰もが無条件で見惚れてしまう愛らしい表情で、上目遣いに椎奈に微笑み掛ける。
「もちろん!杏子が一番可愛くて大好きに決まってるだろ!」
何の躊躇もなく、椎奈も満面の笑顔で杏子に笑い掛けながら、じゃれつくようにぎゅっと妹の体を抱きしめる。
姉妹の仲睦まじい様子を、表面上、孝太郎は微笑ましく眺めながらも、内心は面白くない。
(……即答か)
しかも、そんな彼の小さな嫉妬心に追い打ちをかけるかのごとく、背を向けている椎奈に気付かれていないのをいいことに、杏子は孝太郎を一瞥すると、まるで宣戦布告のように鼻で笑ってみせた。
(孝ちゃん、一応認めてはあげるけど、やっぱりお姉ちゃんの一番はまだまだ譲る気ないから)
そんな愛らしい小悪魔の存在など知る由もない椎奈は、杏子の頭を優しく撫でて、彼女もそれに遠慮なく甘える。彼女らの母親も、そんな様子をにこにこと眺めている。
最早自分の存在などすっかり忘れ去っていちゃついている姉妹を後目に、孝太郎は一人、微かな溜息を吐く。
―――椎奈を巡る2人の水面下での闘いは、まだまだ白黒つきそうにない。




<完>


 ここまで長々と読んでいただき、ありがとうございました。軽いノリのラブコメを書いてみたいと思っていたものの、書き終えたら結局いつも通りの暗い感じになってしまい、向いてないんだなぁとつくづく実感しました…。
 官能小説などとは到底言えないほど、官能描写が足りない話ではありますが、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。


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