告白-7
静寂な電車内で、リズムを崩す事無く、線路を渡る音だけが耳に入り
「しゅう…」
「樹里奈…」
それから私たちは我に返り、お互い目を背け。
やっとの思いで空港まで付き、今度は支笏湖がある北海道まで飛行機に乗る事に
「いやー、何とか乗れたね」
「んもぅー、しゅうったら場所間違え過ぎだよ、私が気づかなきゃ今頃、出発時間を
過ぎてたわよ。」
「まぁそれはそれは良いんじゃない?空港を色々と散歩出来る訳だし」
「呑気ねぇー」
何だかどんどん消えていく、彼への躊躇、そして広がる『彼と居たい』と言う想い
広がる見慣れない光景、体が膠着して仕方が無い…でも、私の隣には彼が居る。
物静かダガ直感的に、私たちの乗る飛行機は確実に支笏湖に向っている。
ここまでの道のりに少しくたびれた、慣れない事を今私たちはしてる訳だし
…この様子じゃ一夜明けるのは確実なので私も少し寝ようカナ。
そう思い、ふとしゅうの方を振り向くと
「あら…」
彼は既に熟睡し、揺すっても起きそうに無く。呆れていると
「!!」
私の肩に、熟睡した彼の横顔が倒れ、私はドキッとしつつも、ゆっくりとその肩に目を
向けると。ソコに安らかに眠る彼の寝顔があり。
「…しゅう」
私は、私は…
彼に躊躇う自分と、彼と向き合いたいもう一人の自分が葛藤をする。
「樹里奈…、生まれて来てくれてありがとう」
寝言で耳にする彼の…本心、私は心が打たれて
「…スミマセン、毛布を一枚」
「うーーーーーーんっ!つぅーーいたぁーっ!」
飛行機で一晩を過ごし、そこから駅とバスで乗り継ぎ、やっと目的地に着いた私達
「わぁー、きぃんもちぃーっ!」
涼やかな風が私の肌に触れ、広大で美しい青空が目に映る。
「お待たせ!」
「ありがと、へぇこれが名物の…」
彼が買ってきてくれたご当地グルメを堪能したり
「あら、しゅうも饅頭にするの?」
「うん、家は一家揃って甘い物が好きなもので」
「ホント、家族思いね」
「そんな…事は、君だって」
私なりのホントに少ない親孝行かな、娘の凶行と入院、そして退院でお父さん達には
散々苦労を掛けたな。あの日私が退院し、父さん達が私の所へやって来て、私はこの時
覚悟を決めていた、実の子でも無い私がこんな負担を掛けて、正直白い目で失望されても
仕方が無い…、そう思っていたのだが。二人は元気になった私を見るや否や、強く抱きしめただ静かに「おかえり」って。それを聞いて私は二人に対する罪悪感と安心感が一気に
押し寄せ、もう二度とこんな私を拾い、許した二人に迷惑は掛けない、絶対に恩返しする
あれから今まで以上に家事に専念し、そんな後ろ姿に二人は娘の思いに薄々気づき
ニコッと微笑みつつも言葉には出さず、何処の家庭と変わらない日々を過ごしている。
腹ごしらえをした私達は、その後近くのビジターセンターに向かい、二人で楽しく
野鳥や、山について楽しく雑学を学び…。
「わぁー、ひぃろぉーーい!」
目の前に、透明感溢れる広大で自然の美しさを物語る湖、これはまさに絶景…
二人で柵の近くにより、その絶景を思う存分見渡し。両手を伸ばし風を感じる彼。
もう大丈夫よね…
私は、彼をもう傷つけない、だから
私の中で、今まで苦しんできたモヤモヤが、今、完全に消え
「!」
彼の腕を、両手で愛おしく包み込む
その感触に気づいた彼は、頬を赤く染め、振り向く。
「樹里奈…」
そして私は嘘偽りの無い、本当の想いを…彼にぶつける
「私は、今まで苦しみ悩んでた…、こんな私が人を好きになって良いのかって」
彼は黙って私の言葉に耳を傾ける。
「今更あれだけの事をした私が、貴方に近づきこんな旅行に一緒に向かい、幸せになっても良いのかって…」
「でも、今はそんな思い消えてきたの、貴方と優しい貴方と共に過ごしているうちに」
「正直今でも不安、貴方と一緒にいて、また貴方を傷つけるんでないかって、私と居ると
しゅうは!」
「ならさ、ここで消える?」
「えっ?」
予想外の言葉
「君の気持ちは良く解る、ならここで俺を苦しめない為に、俺の前から消えるって言うのかぃ?」
「それは…」
「嫌だよっ!そんな事!」
「!!」
急に声のボリュームを上げだし
「君が居なかったら、それこそ苦しい…もしそんな思いを抱き、俺の前から居なくなったら…、俺…心にポッカリ穴が開いて、一生苦しい思いをする」
「しゅう…」
「しないよ、君は、もうそんな事…、仮にしそうになり苦しい思いをしたなら」
俺が、君を救う!
「だから、乗り越えて行こう、二人で一緒に、これまでもこれからもずっとずーっと」
「それって!」
しゅうは、目を潜め優しい声で言う。
好きだよ…、樹里奈。
涙が
私も…好き、大好きだよしゅう
静かに湖が揺れる中、私達は『本物の愛』を手にした。
おしまい
今までお付き合いして頂き、ありがとうございました。