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水族館
【家族 その他小説】

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水族館-5


「……お兄ちゃん、怖くないの?」
「ん? どうしたんだ、里保」
「ここにいても平気なの?」

 分かってるならなんで連れてきたんだ、と言おうとしたが、止めた。里保は悪ふざけで俺を入れたんじゃないんだろうし、責めるのは違う気がした。ここの薄暗くて青い神秘的な雰囲気が俺の気持ちを落ち着かせてくれているのかもしれない。
 なんだ、水族館って案外悪くないところじゃないか。強引に連れてこられたのは事実だけど、里保が好きなものが悪いものだとは思いたくない。いや、多少強引に自分を納得させるまでもない。ここは、綺麗だ。

「……怖いって言ったら、どうする?」

 でも、ちょっと意地悪はしてみたかった。悪戯っぽく里保の顔を覗きこんだら、手を離してしまった。まずい、へそを曲げちゃったかな、と焦ったら、今度は俺の腕に手を通し、そのまま握りしめてきた。

「私がついててあげる。こうすれば平気でしょ?」
「なるほどね、簡単には逃がさないよ、って事か。悪いやつだなぁお前も」

 手の時もかなり恥ずかしかったが、腕を掴まれると更に恥ずかしい。でも、嫌じゃなかった。こうして見てると、朝のハプニングを起こしたのは里保ではない誰かの様な気がしてくる。兄貴を無理矢理掃除機で起こすのと、苦手な水族館に連れてくるのでは……あ、同じ様な行動か。紛れもない同一人物だな。
 こうして間近で里保を見ると可愛い事に気づく。まずい、そういう目で見たことってあまりないのに、意識したら無性に腹の奥がむずむずしてきた。家族の前でも、友達の前でも、そんな事は考えたらいけないのに。確かによくシスコンだとからかわれてはいるが、あくまで兄と妹としての…………


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