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水族館
【家族 その他小説】

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水族館-2


「いい加減にしろ、里保!!」
「やぁっと起きたねお兄ちゃん。意外としぶとかったけど」

 ようやく掃除機のスイッチを切って、勝ち誇った様に笑う妹(りほ)。ちくしょう、ずるい。そんな笑顔を見せられたら、シスコンの兄貴は怒れないじゃないか。妹ってのはずるいよな、自分の立場を分かっててこういうことをやってるんだから。

「……で、何か用か?」
「うん。大した用事じゃないけど起こしちゃった」

 ニコニコしたまま平然と人の神経を逆撫でする里保。この子は僕のなんなんです? まだまだ眠れるはずの日曜日の朝を奪える人なんて、居はしませんよ、絶対に。3日間くらいは口をきいてやるのを止めてやろう、と決めた。

「今日はお休みだよね」
「ああ、そうだよ。1週間のうちで唯一安らげるはずの日だ。それなのにお前のせいでこのざまだ。どうしてくれる、里保。悪いと思っているのならこのまま黙って部屋から出ていきなさい」
「あの、嫌なら別にいいんだけど、もし良かったら私とデートしてみない?」
「そうだな、確かになんていう事のない話だったな。おやすみ、我が妹よ。高校生の癖にお兄ちゃんとデートがしたいなんて言ってしまう、寂しい子」

 里保が隣に座っているが全く気にしないで布団に潜り込んだ。全く、とんでもない奴だな。お兄ちゃんとデートがしたいからわざわざ起こしたなんて、どうかしている。そうだ、その通りだ。お兄ちゃんと……


「なぁぁぁぁんですってェえええェええええぇえええええっっ?!」


 まったく、思わず飛び起きちゃったじゃないか。どうやらお兄ちゃんという奴は妹から思いもよらない言葉を頂くと、その意味を理解するのに時間がかかるらしい。つまり、デートのお誘いをするために掃除機を持って突入してきたってわけだ。回りくどいんだよな。

「いや、ちょっと待ってくれ里保、お前の気持ちは嬉しいよ。しかしだな、せめて告白して返事をもらってからにしてはどうだろう? 相手の気持ちも確かめていないのにデートに誘うってのは、お兄ちゃんはあんまり良く思わないんだけどなぁ」
「お兄ちゃんって器用なんだね。喋りながら服脱いで着替えてる」

 里保の指摘通り、俺はバッチリ着替えてデートの準備万端だった。我ながらこんな器用だったのかと驚いてしまう。しかし、よく見ると里保もすでに着替え終わっていた。よく考えたら、ここで今日初めてこいつの服装をまともに見た気がする。
 率直に言うと、可愛かった。目鼻立ちのはっきりした顔立ちによく似合うショートカット、その髪型に合わせたガーリーな服装だった。まあ、なんでも似合うんですけどね、里保なら。だって可愛いんだもん。こんなことならもっと早く見ておけばよかった。ああ、朝から幸せな気分だ。


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