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きっとそこには何かがあるから
【青春 恋愛小説】

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きっとそこには何かがあるから-1

「こんにちは!」

あたしは元気にそのドアを開けた。

「あぁ、鶴羽(つるは)ちゃんいらっしゃい」

その中の人物、養護教諭の中村は柔らかく微笑みかけた。
あたしもホッとして微笑み返す。

「今日は随分早いのね〜」
「はい、今日は調子が良くって」

笑顔でそう答えた。
本当に今日は調子が良かった。
心臓に病気を抱えていてこんなに早い時間に登校することなんて滅多にない。
って言っても保健室登校だけど。
教室じゃいつ発作が起きるか分からない。
高校へ行くことさえ渋った両親が出した条件が保健室登校だった。
ここは全日制・定時制両方ある高校。
定時制に通っているあたしは実質、登校するのは1週間に1回しかないのに。
それが今日、土曜日。
こんな学生生活を始めて2年目になる。
ハァ・・・
保健室の机で課題をしながらため息が出た。

「鶴羽ちゃん、ちょっと留守いい?2時間くらいしたら戻るから」
「あ、ハイ。任せてください」

あたしは笑顔で元気よく答える。
先生が出て行ったのを目で確かめてからあたしはまた机に向かった。
カチカチカチ・・・
どれぐらい時間が経ったのだろうか。
妙に時計の音だけが耳に響く。
・・・ん?
保健室のドアにはめ込まれているすりガラスの向こうにふと影が見えた。
と、同時に。

コンコン!

あ、人・・・
どうしよう・・・先生いないのに・・・。

コンコン!

再びその人影はドアを叩く。
う〜・・・仕方ない!出るか!
あたしはドアに近づき鍵を開け、その人影に促す。

「どーぞ」
「あ、ども」

そう言ってその人影はドアを開けた。
そこに立っていたのはブレザー姿の背の高い男の子。
制服ということは全日制の生徒なのだろう。

「すみません、足にケガしちゃって・・・」
「あ、じゃあそこ座ってください」

そう言って座るように促すと消毒液と絆創膏(ばんそうこう)を棚から出す。
先生はいないけど、もう2年目だもの。酷くない傷なら一通りの処置は出来るようになっていた。
手際よくその傷を処置する。

「・・・定時の生徒?私服だから」

彼の足元で救急箱に消毒液と絆創膏を仕舞っていたあたしはそう聞かれてふと顔を上げる。

「はい、2年です。あなたも、2年ですよね?」
「うん、そう。あ、ネクタイで分かった?」
「はい」

ニッコリと微笑んでみせる。


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