きっとそこには何かがあるから-2
この学校は男子がブレザー・女子はリボンの色が学年ごとに違っている。
ちなみにあたし達、定時の生徒は私服だ。
「今日は定時も授業でしょ?なんでここにいるの?」
そう聞かれて、一瞬ひるんだ。
誰もそのことをストレートに聞く者など今までに居なかった。
内心は動揺しながら、それでも平静を装って答える。
「ちょっと病気持ちで」
笑いながら、そう答えた。
本当はあたしだって教室へ行きたい。
皆と一緒に授業を受けたい。
もっとワガママを言ってもいいのなら全日制へ通いたかった。
友達をいっぱい作って、一緒にお昼を食べて、休み時間にはバカな話をして、部活をして・・・
強烈な、憧れ・・・。
「そっか・・・」
彼はポツリと呟いた。
あたしはそれが聞こえなかったかのように立ち上がり、彼に背を向けて棚へ救急箱を戻す。
カチャンと鍵をして。
彼の方へ振り返ろうとした。
「えっ・・・?」
振り返れない・・・。
そして背中には人の温もり。
何か強い力があたしを抱きすくめていた。
保健室にはあたしと彼しか居ないはず・・・。
「あ・・・の・・・?」
「あんたみたいな顔で笑う人、俺知ってるよ」
「え?」
「本当は笑いたくないのに、笑うんだ」
「・・・」
何を言ってるんだろう。
この人は。
あたしはそうするしかなかった。
病気を持ってて、その分他の人よりたくさんの迷惑を色んな人にかける。
暗い顔なんて、しちゃいけなかった。
ワガママなんて言っちゃいけなかったのー・・・。
「・・・泣いとけ」
気付いたら、涙が溢れていた。
何故だろう。
涙なんて何時ぶりだろう・・・。
なんであたしはこの人の前で・・・会ったばっかりのこの人の前で涙を流しているのだろう。
泣いていいの?
あたし、泣いてもいいの?
彼は無言であたしを振り返らせて、涙をそっと指で拭いてくれた。
それでも際限なくあたしの涙は溢れてきて。
「だいぶ我慢してたんだなぁ」
と、彼に笑われて。
その笑顔にあたしもつられてぐちゃぐちゃの顔のまま笑って。
それを見た彼はフッと目を細めてあたしを正面から抱きしめて。
それはまるであたし自身を正面から抱きとめてくれたようで、制服越しに感じる人の体温にあたしは随
分安心した。
ずっとこのままこの人に抱きしめられていたいと思った。
あたしが落ち着いて、彼の背中に手を回すと彼が言葉を発した。