投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

氷炎の魔女・若き日の憂鬱
【ファンタジー 官能小説】

氷炎の魔女・若き日の憂鬱の最初へ 氷炎の魔女・若き日の憂鬱 9 氷炎の魔女・若き日の憂鬱 11 氷炎の魔女・若き日の憂鬱の最後へ

一人目の相手-1

 ***

 ―― 部屋の声が外に漏れないように、シャルは防音の魔法をしっかりとかけ、ソワソワと視線を彷徨わせる。
 無言のシャルに焦れたように、ロルフが口を尖らせた。

「だいたい、俺はともかく家にくらいは連絡入れなよ。サーフィおばさんだって心配してたんだぞ。シャルが幼稚な苛めに負けるはずはないけど、仕返しをやりすぎてないかって」

「……ちゃんと手加減はしたわよ。帰ったら、お母さまに言ってやって」

 信用がないのは、幼い頃からの破天荒さのツケで自業自得だが、不貞腐れて頬を膨らます。

「冗談だよ。おじさんもおばさんも、本当に心配してる」

 ロルフは表情を和らげたが、一瞬後には悲しげに声を落とした。

「シャル……俺に遠慮して断れないから、こんな風に飛び出したのか?」

「そうじゃない……けど……」

「じゃあ、どうしてだよ。シャルは昔から、何でもはっきり言ったじゃないか。俺は、そんなシャルが好きなんだ。だから、俺の申し出が嫌だったなら、ちゃんとそう言ってくれ」

 もう一歩詰め寄られ、後ずさるとシャルの背中が壁に当たった。呼吸が早く浅くなり、息が詰まって苦しくなる。
 しかし、傷ついたようなロルフの表情を見ていると、切ない……というより、次第にムカムカと腹が立ってきた。

「い、嫌じゃない……から、困ってるのよ!」

 背の高いロルフに対抗するため、つま先だちになって顔を上げ、キッと睨む。
 はっきり言えないから、こんな手段で隣国まで逃亡したのに!
 ロルフこそ、なんだってそんなに簡単に、幼馴染を失うかもしれない賭けに挑めるのか。
 シャルは、賭けられなかった。
 ロルフが大事すぎたから、自分の意外な方面を見て落胆される可能性が、たとえ0.1%でもあるとすれば、挑みたくなかった。

 でも……そんなにお望みなら、もういっそ全部ぶちまけてやる!



氷炎の魔女・若き日の憂鬱の最初へ 氷炎の魔女・若き日の憂鬱 9 氷炎の魔女・若き日の憂鬱 11 氷炎の魔女・若き日の憂鬱の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前