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氷炎の魔女・若き日の憂鬱
【ファンタジー 官能小説】

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三人の子ども達-5


 ロルフに恥部を晒す勇気もなく、友人でいたいと望みながら、他の女性を選んで欲しくないなど、我ながら卑怯にもほどがある。

「……っ!!」

 俯いて歯を喰いしばる。ロルフの顔をまともに見ることが出来ない。

「シャル……?」

 怪訝な声に答えられず、無言で窓を閉め、カーテンを引いてしまった。
 そのまま部屋を飛び出し、一気に階段を駆け降りる。
 両親がいちゃつ……くつろいでいたリビングに乱入し、父へ噛みつかんばかりに詰め寄った。

「お父さま! 今年、ロクサリスに留学へ行った錬金術師だけど、確か早々と帰国してきたのよね!?」

 娘の剣幕にも、師匠でもある錬金術師ヘルマンは、軽く首を傾げた程度で動じなかった。

「は? ええ……。様子を見に行きましたら案の定、胃潰瘍と軽度のイローゼを患っていたので、帰国させましたが……」

 ギルドの交換留学生には、陰湿ないじめや重圧がのしかかるが、任期の一年間を無事にこなせば、非常に名誉な経歴となる。
 そのために志願者は多く、上級錬金術師の子息やコネがあるものが、よく優先された。
 今年の選出者もその手合いだったが、ヘルマンが使えないと予想した通り、三ヶ月と持たなかったのだ。

「お願い! 私を代わりに行かせて! 明日……ううん、今夜にでも出発する!」

「……は?」

 今度はさすがに驚いている父の白衣を掴み、ガクガク揺さ振った。

「留学生が無理なら、派遣錬金術師になるわ! 自立都市でもシシリーナでもイスパニラでも、どこにでも行くから!」

 そう、ロルフと顔を合わせずに済むなら、どこでもいい。きっとあまりにも近すぎた関係ゆえに、甘えきってしまったのだ。
 一年でも二年でもいいから、ロルフと離れて頭を冷やしたい。

「え!? シャ、シャルぅぅっ!?」

 母は完全にパニックで、夫と娘を交互に眺めオロオロしている。
 かつては王宮の護衛剣士として名を馳せ、今も士官学校で剣術を教えている母は、四十を過ぎた今でも心身ともに若々しく、気力も胆力も並みの女性より抜きん出ている人だ。
 そして娘の突拍子もない行動にも、慣れっこのはずだった。
 しかし、突然に家を出たいと言われるとは、思ってもいなかったらしい。

 渋る父と泣き出してしまった母を、なんとか説得し、その足でギルドの長と交渉をしに行った。

 そしてロクサリス在留期間中に、今までフロッケンベルク留学生に辛酸を舐めさせていた連中に一泡吹かせるという条件で、シャルは留学生の権利を勝ち取り、早朝までにこっそりと旅立ったのだ。



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