千年メダル-6
「ここ、ちゃんと直したんだ」
久留米さんは木の杭を触りながらポツリと呟いた。
ここで、久留米さんの最愛の人は自らの命を断ってしまった。
そう思うと眉宇が自然としかまって、唇を噛み締めてしまう。
一体どんな思いでここに来たんだろう。
そして、なぜあたしをここに連れてきたのかな。
あたしは、杭に触れたままの久留米さんの後ろ姿に訊ねてみた。
「久留米さん、ここにあたしが来てよかったんですか?」
すると、ゆっくり振り返った彼は片眉をあげて笑うと、
「うん、俺怖がりだから誰かについてきて欲しかったんだ。
だって、オバケとか出そうだし」
とおどけて言った。
――誰でもよかったのか。
あたしが特別だからとか、そんな理由ではなかったんだ。
プライベートで付き合いのある人はいないみたいだし、久留米さんがここに来る理由を知ってる人なんて、あたしか副島主幹くらいのもの。
気軽に付き添いに誘えるとすれば、もちろんあたししかいないわけで。
あたしは消去法で選ばれただけに過ぎなかったんだ。
下唇を噛んで俯いているあたしに気づかないまま、久留米さんはしゃがみ込むと、二つの花束をそっとの前に置いた。