千年メダル-5
◇ ◇ ◇
それから車を走らせることおよそ1時間。
結局あたし達は車中ではほとんど会話のないまま、I岬にたどり着いた。
重苦しい空気の中を抜け出すように、車から降りると、心なしかいつもよりヒンヤリした空気が身体にまとわりついて、あたしは思わず身震いした。
やや強い潮風に前髪がかきあげられ、手ぐしでそれを整えつつ彼を見ると、後部座席のドアを開け花束と小さなレジ袋を手にした彼は、
「ついてきて」
とだけ言ってスタスタ歩き始めた。
カラカラに乾いた地面を蹴るように歩く久留米さんの後を追うあたし。
あたしの歩みに合わせて砂埃が舞い上がる。
鼻につく潮風は、夏特有の生臭さとはうって変わっていて、秋の匂いが混じりこの場に相応しくないほど清々しかった。
松林を通り抜けると、辺り一面に広がる眩しい景色。
眼下に広がる穏やかな海面は、太陽の光に照らされてユラユラ揺れていた。
久留米さんは、こちらを振り返ることなく、断崖の際へとドンドン進んでいき、やがてこれ以上進んでは行けないですよというための木の杭とロープでしつらえた柵の所まで来ると、ようやくその歩みを止めた。