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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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千年メダル-3

玄関のドアを開けると、門の前に久留米さんの車が横付けされていて、彼はその前に立っていた。


あたしは、大きく息を吸い込んでからカツンとパンプスを鳴らし、彼に近付く。


「おはよ、いきなり誘ってごめんな」


そう言って申し訳なさそうに笑みを見せながら頭を下げる彼。


でも、それは以前みたいな自然な笑顔ではなく、どこかぎこちないような、強張ったものだった。


だからあたしも必然的に引きつったような笑顔になってしまう。


「いえ」


「じゃあ早速だけど、乗って」


会話だけ聞けばカップルのそれみたいだけど、ギクシャクした空気がまとわりついたあたし達は、決して甘い雰囲気ではなかった。


だから、なんとなくあたしは足枷をつけられたような重い足取りになる。






彼に促され、助手席に乗り込めば、ふわっと甘い匂いが広がった。


匂いの方向に目をやれば、リアシートにはなかなか立派な花束が2つ。


白くて大きな百合が匂いの元なのだろう。


それをメインとして、あとはカスミソウやガーベラ、あとはあたしのよく知らない花が何種類かバランスよく飾られていた。

あとはコンビニデザートのプレミアムロールケーキが2、3個と久留米さんの煙草が入っているレジ袋が花束の横に置かれていた。


一瞬、浮き足立った感情が横切るけど、2つもあるそれに、その感情はすぐ抑えつけられた。


あたしに、ではないことだけは確かだ。






「さあ、行くか」


いつの間にか運転席に乗り込んだ久留米さんは、エンジンをかけてからシートベルトを締めると、そう言って車を発進させた。




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