千年メダル-2
玄関の上がり框に座り込んで、履き慣れたヒールの低い赤いパンプスを履いて、黒いショルダーバッグからスマホを取り出す。
久留米さんからは、“あと30分ほどで迎えにいく”と愛想のないメールが入っていた。
もうすぐだ……。
不安を拭い去れないでいると、背後からメイがトコトコ駆け寄ってきてあたしの横に座った。
「メイ……」
彼女は昨日の薄汚れたままの状態。
タオルで軽く汚れは落としたつもりでも、どことなく毛並みはくすんでいた。
「久留米さんは、一体何の用事なんだろうね」
あたしがそう問うてメイの顎を撫でてあげても、黙って喉を鳴らすだけ。
あたしはため息を一つ吐く。
久留米さんはきっぱりあたしを振ったんだし、これ以上何の話があるんだろう。
できれば、もう傷つきたくなんてないんだけど。
「メイ、あたしこのまま久留米さんのこと諦められるのかな」
時が経てばきっと久留米さんへの想いも過去のものにできるのだろうか。
あんなに好きだった塁に対してさえ、気持ちが変わっていったように。
でも、心身共にボロボロだった時に助けてくれた久留米さんを諦めたくない自分がいるのも事実で。
この先あたしはどうすればいいんだろう、そんなことを考えているうちに時間は思ったよりも経っていたらしく、短いクラクションの音が外から聞こえてきた。