千年メダル-14
「そん時に、俺の中で芽衣子以外の女の存在が大きくなっていることに気付いたんだ」
頭上に降り注がれた言葉に、あたしは勢いよく彼を見上げる。
でも彼は相変わらず遠くの水平線を目を細めて見ているだけで。
まるで昔話でも読み聞かせるような淡々とした口調に、あたしは彼の言った言葉は空耳だったんではないかと勘違いしてしまうほどだった。
ポカンと口を開けたあたしを一瞥した彼は、なぜかクスッと笑う。
そして久留米さんは、いつものようにジーンズのポケットから煙草を取り出すと、おもむろにそれをくわえだした。
風が強いせいで、ライターがなかなか点かないらしく、カチカチと何度も火を点ける音が頭の上から聞こえて、せわしないその音がまるで心臓の鼓動のようだった。
「でも、アイツらのこと考えたら、簡単に自分の気持ち認めるわけにいかなかった。
俺が好きなのは芽衣子だけだろって。
もう芽衣子に会えないからって他の女に傾くのはおかしいだろって。
何度も自分にそう言い聞かせていたんだけど、ソイツが俺を好きだと言ってくれた瞬間、全て忘れて自分の想いをぶちまけそうになっちまったんだ。
このままじゃさすがに自分がヤバイって思った。
芽衣子を忘れていく自分がどうしようも怖くなって許せなかったから……、あの時、俺はソイツから逃げてしまったんだ」
風になびいて煙草の香りがあたしの鼻につく。
あたしはゆっくり顔を上げると、白い煙は空高く舞い上がって、やがて散り散りになって見えなくなった。
目の前に置かれた花束も風に吹かれ、透明のフィルムがガサガサ音を立てている。
しばらく黙ったままのあたし達の耳にはそんな音ばかりがやけに響いていた。