メイ-8
秋が深まるこの季節の夜は、更けるにつれて空気が刺すように冷たくなっていき、汗だくになったあたしの身体から容赦なく体温を奪っていく。
もう、自分がどこにいるのかよくわからなかった。
空腹と、疲労と、メイの安否がわからない不安が、少しずつあたしの神経を蝕んでいく。
猫の行動範囲なんて、たかだか半径500メートル程度のものらしい。
だからあたしは何度も隈無く探してきたし、それでも見つからないから大通りに出て探し回ってきた。
なのに、結局見つからない、久留米さんに助けを求めたくてもできなかった、という実りのない結果だけを抱えつつさまようだけ。
やがて、自分の家が遠くに見えてくると、あたしは力尽きたように冷たいアスファルトの上にへたり込んでしまった。
「……っく」
そのまま両手を地面につけてむせび泣くしかできない。
ハラハラとこぼれ落ちる涙が、湿気ったアスファルトにシミを作り、歯形の残る手の甲を弾く。
あたしが塁と会わないで、まっすぐ帰っていれば。
寒さと、後悔と、自分に対する苛立ちで、あたしは何度も右手をアスファルトに叩きつけた。