メイ-7
そんな群衆を気にも留めずに進むあたしの足。
夕食をとらなかったあたしの疲労は思った以上に足にキていたらしく、大して長くもない足がバランスを崩してしまったかと思うと、そのままベシャッとアスファルトに前のめりで転んでしまった。
なのに、こんな状態でも、誰も近付いてこようともしない。
当然か、こんな気持ち悪い女に関わりたいと思う奴の方がおかしいんだ。
手にも足にも力が入らない。
ただ零れてくるだけの涙。
それを拳で目元をグリグリこすると、ジャリッと砂が肌にこすれてますます涙が込み上げてきた。
誰か、助けて……。
こんな時に浮かぶのは、やっぱりあの人の姿だけ。
…………久留米さん。
“期待させるような真似しないで”と言ったくせに、こんな時ばかり頼るのは勝手かもしれない。
でも、一向に見つからないメイのことを思うと、彼に会いたくてたまらなかった。
久留米さんなら、きっと一緒になって真剣に探してくれるかもしれない。
緊急事態だし、今なら電話してもいいよね……?
メイの頭を撫でているときのあの優しい笑顔を思い出しながらスカートのファスナーの辺りに備え付けてあるポケットに手を伸ばした。
しかし、固い感触のそれは、そこになかった。
母からの電話を受けた後、バッグに入れたままになっていたんだ。
そしてあたしは、リビングのソファーにそれを置いたまま家を飛び出したことを思い出した。
「……うぅ……」
もう、どうしていいのかわからなくなったあたしは、そのまま身体を踞らせて人目も憚らずにワンワン泣き出してしまった。