メイ-5
でも時間が経つにつれ、そんな想いも焦りに変わっていく。
静かな住宅街に響くのは、あたしの息切れする音とパタパタとサンダルがアスファルトを引きずる音のみ。
時折車のエンジン音が遠くで鳴り響く音や風に木の枝がざわめく音はあたしの耳にほとんど入って来なかった。
鳴き声すら聞こえない今の状況に、不安で押し潰されそうになってくる。
「メイ……、どこに行っちゃったのよう……」
つま先がかじかんできてジンジン痛み始めた。
咄嗟に履いてきたつっかけタイプのサンダルに舌打ちが出る。
まだ日中は暖かいこの季節。
でも、夜も更けて気温もグッと下がれば、ストッキングにサンダルの状態にはじわじわダメージが蓄積されてくる。
でも、そんな泣き言言ってられない。
こうしている間にもメイはどこかで心細くて震えているかもしれないのだから。
◇ ◇ ◇
あれから辺りを探し回って、腕時計を見ればすでに11時をまわっていた。
それでも一向にメイは見つからず、焦りとともに諦めの気持ちが膨らんできた。
何度同じ場所を行ったり来たりしただろう。
他所の家の塀に登ったり、庭に入り込んだり、子供でもやっと通れるほどの狭い路地裏に無理矢理入ったり、公園の木によじ登ったり、もはや不審者と思われても仕方ない行為を繰り返しながら、何度もメイの名前を呼んだ。
でも、相変わらずなしのつぶてのままで。
過ぎて行く時間に比例するように、あたしの身体にはあちこち擦り傷や、ストッキングが破れて伝線した跡が増えて行くだけだった。