メイ-20
「叱らなくていいよ。ここに置きっぱなしにしてた俺が悪いんだから」
久留米さんはそう言って、振り上げたあたしの腕をそっと元に戻して小さく頷いた。
「でも、壊しちゃったかもしれないし……」
「写真立ての留め具が外れただけだよ、ホントに大丈夫だから」
久留米さんはそう言うと、車内灯を点けた。
ぼんやり明るくなった車内に久留米さんの表情が柔らかく浮き彫りになってくる。
目を細めてメイを撫でるその姿は、本当に気にしてないという様子に見えた。
メイもメイで、さも自分の指定席かのように前足で均すようにシートをグニグニしてから、おもむろにその身体を丸め始めている。
なんとなくメイが上で久留米さんが下みたいな上下関係ができたように見えて、こんな時なのに思わず吹き出してしまいそうになった。
久留米さんは、そんな彼女のフワフワの毛並みを一撫でしてから、助手席の床に散乱してしまったフォトフレームを拾うために、身体を伸ばして前屈みになった。