二人だけのオフィス-2
プルルルルル!プルルルルル!
突然鳴り出した社用電話に肩をビクつかせた。まさかこんな時間に誰かが電話してくると思わなかった私は、これは何かホラー的な何かであろうかとビクビクしながら、電話を見つめた。
いや、ありえん。ホラーなんてありえん。
そう言い聞かせて、こんな時間であっても取らなければ何かのミスに繋がるのではないかと思い電話に手を伸ばした。
もしかしたら高橋君の社内電話かもしれない。ポットが無くて焦っている彼を想像して少し落ち着きを持った私はカチャリと受話器を取った。
「もしもし、光圀コーポレーションデザイン担当部の渚です。」
てっきり高橋君の声がすぐ聞こえると思っていた私は、この無言にどう対処すればよいのか分からなくなる。もしかしてマジなやつか。これよくテレビでやってる、なんかマジなホラーか。
「もしもーし、す、すすみません、どちら様でしょ、うか??」
ここはお化けと仲良くなった勝ちだ。ビビり過ぎて思考回路がおかしい。
「かけ間違いですか?よくあるんですよねー!あんまり気にしないで下さい!」
うおおおおおおおおお!人見知りのお化けか!?そうなのか!?返事をくれええええ!お前を呪うとかでもいいから返事をくれええええ!
と、焦る私をよそに受話器越しに何やら物音がしたと思った時、
「おい!征嗣!お前今どこにいんだよ!ケータイも繋がんねーし!どうせ会社だろうと思ってもう下に来ちまったよ。入れてくれ!お願いだ!おい!征嗣聞いてんのか!?おい!!せ………」
「あのおおおおおおお!!!!!!」
突然始まったマシンガントークを私のドス声が断ち切った。
「誠に申し訳ありませんが、この電話は会社内の電話でありまして、私用での通話は禁止となっておりますので、使用はおやめください!!!!」
ちょ、これはやってしまった。いくら私用の電話であったとしてもこれはマシンガンすぎた。いやでも私の対応は間違ってはいないはず。うん。………返答がない。
「あのっ、先ほど“征嗣”とおっしゃっていましたが、本社のデザイン担当部に勤務の高橋征嗣さんのご家族でいらっしゃいますか?」
「……お前は誰だ。」
ちょっ!タンマタンマ!こっちが聞いてんだよ!質問に質問で返してはいけないとガキの頃に習わなかったのか!?
「先ほどもお伝えしましたが、光圀コーポレーションデザイン担当部の渚小梅です。高橋征嗣さんと同じ職場に勤務しておりますが、高橋征嗣さんに何か御用でしょうか。」
よし、冷静さを保ち返答ができた。次のお前の返答によってはブチ切れるぞいいな。
「……なぎさ、こうめ…………?」