大好きだった人-8
「なんか、久しぶりだね」
「おー、そうだな。
最近は全然会ってなかったもんな」
平日の夜だからか、割と空いていた店内はやけに静かで、あたし達の会話が店員さんにまで聞かれてしまいそうなほどだった。
お店の一番奥のテーブルに向かい合わせで座るあたし達は、オーダーを済ませてからお互い煙草を取り出し始める。
塁は煙草を細長い指で挟むと、おもむろに口にくわえてから、ジッポで火を点けた。
キンと高い金属音を鳴らして、役目を終えたそれは、再びテーブルの上にコンと置かれる。
あたしはその動作をただ黙って見つめていた。
この綺麗な手が、あたしの身体の隅々まで這い回り、さんざんあたしを乱れさせてきたのかと思うと、無意識に太ももの内側に力が入る。
ヤる以外にあたしを呼び出した目的はなんだろう。
塁の表情を確かめようとしても、いつもとおんなじ涼しい顔。
彼の本意がわからないながらも、何か話題を出さないと、と考えていたら、塁の方が煙草を灰皿に置いてから口を開いてきた。