大好きだった人-5
身体だけの関係になっても、今日みたいに(生理は嘘だけど)あたしの事情により出来ない時は当然ながらある。
そういう時は、車でどこか人気のない所に行って、あたしが口と手だけを使って塁を満足させてあげるパターンになるのを知っているからだ。
塁は自分の性欲が満たされたら、“サンキュー”と軽くお礼を言って早すぎる逢瀬を終わらせようとする。
それでも今までなら、“好きだから”と自分に言い聞かせて、釈然としない気持ちをごまかしてきた。
でも、今はもうそんな惨めなことはしたくない。
今のあたしなら、塁がどんなに望んでも突っぱねる自信がある。
だって、あたしの気持ちはもう別の人を向いてしまったのだから。
『たまにはいいだろ、奢ってやるから付き合えって』
あたしの心の内を知らない塁は、呑気な猫なで声であたしを誘う。
そろそろこの関係を清算させる時期がやってきたんだ、と、あたしはソッと目を閉じた。
そして、
「何時にどこ行けばいい?」
と、冷めた声を出した。