大好きだった人-20
セフレなんてろくでもない関係、終わり方も綺麗になるわけないのはわかっていた。
でも、あたしが泣いてすがって、それでも切り捨てられるもんだと思っていた結末とは違ったのには驚きだ。
店を出ると冷たい風が、暖房で温まった身体を突き刺してくる。
「あー、寒い」
見上げれば、冷気の中で輝く星が優しく瞬いている。
なるべく塁のことは考えたくなかった。
自分で受け入れなかったとは言え、大好きだった人の悲しむ顔なんて思い出したくない。
だからあたしは呑気に星を見上げて、他人事みたいに一人ごちた。
寒さに身を縮こませながら、自分の車のドアの前まで来ると、あたしはゴソゴソバッグの中に手を突っ込んで車のキーを探った。
少しかじかんだ指でバッグの中を漁っているけど、普段の片付けられないがさつな性格が災いして、なかなかキーを見つけられない。
寒いのになあ、なんてイライラしながらバッグの中を引っ掻き回していると、ふわりと背中が外気から遮られた。
ヒッと息を呑む音、ドサッとバッグがアスファルトに落ちる音。
開いていたバッグから、車のキーや化粧ポーチ、スマホや手帳がアスファルトに広がった。