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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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大好きだった人-19

立ち去ろうとするあたしの腕を塁がグッと掴む。


痛いほど力が込められたその手は、白くなって骨が浮かび上がっていた。


普段からあまり感情的な所を見せないクールな塁が、やけに感情を剥き出しにしている。


それが、やけにあたしの心を煽ってしまう。


あたしの顔を見つめ、塁は喉仏を上下に動かしてから、


「行くなよ」


と、だけ言った。


たった一言なのに、ものすごい破壊力。


多分今これを飲んだら、塁とは幸せになれる、そんな気がした。


他に好きな男がいると知っても引かないほどの塁の気持ちがとても強いものだと知ったからだ。


でも、もう違う。


欲しいのはこの綺麗な手じゃなくて、もっと大きくて骨ばった、あの人の手。


最後に車で引き留められた久留米さんの大きな手が塁の手にダブってくる。


二度と触れてもらえないあの手の感触を思い出しながらあたしは、


「離して」


と、冷たい声で言い放ち、クルッと彼に背を向け、小走りでお店を出て行った。




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