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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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大好きだった人-13

塁は、腕組みしながらただ黙ってあたしを見ていた。


少し前に流行った曲がオルゴールにアレンジされている優しいBGMが、やけにこの場に不釣り合いだった。


優しいメロディーにマッチした、黄色味がかった照明、木目調のまだ木の香りが残るテーブル。幸せそうに談笑しながら食事を楽しむ一組の家族。


いや、この和やかな空間に不釣り合いなのはむしろあたし達の方か。


少し前のあたしだったら、この申し出に涙を流して喜んで、和やかな空間に溶け込んでいけたかもしれない。


それを留まらせていたのは、もちろん久留米さんの存在と、あと一つ。


「……彼女となんかあったの?」


レンタルビデオ屋で見た、ショートヘアの可愛い女の子の横顔を思い浮かべながら、あたしは彼に訊ねた。









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