第6章 狂宴-24
何とか責めから逃れようと必死にもがくも、男は巧みだった。まるで心を読まれてるかのように私の動きは制御され、身体のどこかに力を入れようとしても、首筋を舐められたり、乳首をつねられたりして弄ばれてしまう。元より力づくで押しのけることなど叶わず、腰をぐいぐい押しつけられる。
その内、薬を飲まされたときから感じる、じんわりした暖かさが頭の中で広がっていき、楽しい気持ちが込み上げてくる。甘い快楽の前では痛みすら心地良い刺激と代わり、このまま身を委ねてしまいたくなる。
‥くちゅ
蜜が溢れ出す様な潤みを覚え、忘我の境から慌てて我に帰るも、もう身体の昂ぶりは抑えられないところまで来ていた。腰を動かしてるのは男のみならず、自ら受け入れるように揺らし、身体は火のついたように熱く、絶頂を迎えなければおかしくなりそうだった。
「ああっ、いいぞ、いいぞ紫織、さぁ、イけ、イくんだ!」
感極まった声で男が叫ぶと、腰の動きが早まり、肉襞を一層刺激される。だが、身体が求めていても心は男を拒否しており、気が狂いそうな板挟みに翻弄される。
”感情に負けちゃ駄目っ、この男に許しては駄目っ、私は、私は綾小路家の誇りを守らなきゃいけないの!”
「んぐぅふっ〜〜!」
心の叫びは言葉にならず、ついに身体の奥底からほとばしる奔流が、蜜となって溢れ出す。同時に私の中で猛り狂っていたものから、熱いものが溢れ出すのを感じる。
火照った身体から力が抜け落ち、気だるい疲れが身体を蝕む。喪失感と絶望が心に広がり、何も考えられなくなる。ただ、取り返しのつかないものを失ったのだと悟り、目の前に迫ってくる暗闇を受け入れる他なくなった。
隣で囁く男の声は、もう届かない。このまま二度と目を覚まさない予感を感じながらも、私の意識は深い闇の世界へ、深く、深く落ち込んでいった。
暗闇に響く装置の作動音は、羽虫が羽ばたく音にも似て、僅かな振動を伝えてくる。
それ以外、何の音もしない。深夜の文化棟は静かだった。
いつになく入念に装置のチェックを行い、俺は行程が問題なく進んでいることを確認する。これまで何人もが座してきた椅子では、特別な女性が教育を受けている最中だった。
バイタルが安定し、拒絶反応の兆候もなく、教育が刷り込みのフェーズに移行したことを確認すると、ようやく制御装置の前を離れることができる。この段階までくれば、後はもう待つだけだ。
俺は皮肉を込めて教室と呼んでいる部屋に移ると、唯一人、教育を受ける生徒の元へ近づいた。ヘッドホンを耳にあて、大人しく座る紫織だが、その姿は名家の令嬢には似つかわしくなかった。まろやかな乳房は剥き出しで、乱れたドレスの裾からは艶めかしい素足が覗いている。そんなはしたない姿にもかかわらず、彼女は放心したような表情で、一心にディスプレイに魅入っている。