第27章 別れてなんて言わない。2番目で良いの-1
翌日、昴は文化祭の準備で綾乃達と買い物に行くことになっていた。昴は綾乃との関係を気にしているひたぎを気遣い、授業が終わるとひたぎの下へ飛んで行った。
「ひたぎ、文化祭の買い物が終わり次第電話する。それまでごめん。待っててくれ」
「謝ることなどないわ。あなたは、クラスの仕事を当たり前にこなすだけ。でも、もし間違いを起こしたら・・・どうなるか分かっているわね?」
「ああ、何も心配ない。綾乃の他に杏子も一緒だ。じゃあ、行ってくる」
ひたぎの思いは嬉しいが、綾乃に対しては少し神経質になり過ぎではないかと思っていた。昴は急いで家へ帰って着替えると、急いで待ち合わせの駅前へと向かった。
待ち合わせ場所には、既に綾乃が待っていた。
「か、可愛い・・・」
昴は綾乃の私服姿に見とれてしまった。学級委員で優等生の綾乃は、普段は長い髪を後ろで縛り、眼鏡に膝下までの長いスカートと大人しい印象だった。
そんな綾乃が、今はミニスカートに生脚、胸元の開いたシャツは大きく膨らんだ胸にピタリと張り付き、豊かな胸の谷間を眩しく覗かせていた。そして、長い髪を降ろし、眼鏡を外した瞳は大きな猫目で、子猫のように可愛いらしかった。
綾乃が昴を見つけて大きく手を上げ、子供のように手を振った。
「綾乃、別人かと思ったよ。コンタクトにしたのか?」
「うん。どうかな?似合うかな?」
「とても可愛いよ。降ろした髪もとても似合ってる。それで学校に行けばモテモテじゃないか?」
「そうかな?八蜜くんがそう言うなら・・・そうしようかな・・・あ、そうだ。杏子から連絡があって、急用で来れないって言うのよ」
「急用なら仕方ないな。荷物なら僕が持つから大丈夫だよ」
「頼りにしてます!」
綾乃が昴の腕に縋るようにして歩き出す。
ぷに!
「あ、綾乃・・・」
綾乃の胸が腕に当たり、柔らかな感触が伝わってくる。あわてて、綾乃を見ると、真っ白な胸の谷間が瞳に飛び込んできた。
「八蜜くん、どうかしたの?」
「ああ、いや、その・・・そうだ、買い物のリスト持ってきたか?」
「頭に入っているから大丈夫。重い物は後にしたいから最初はこの先の百円ショップ。次にハンズによって、最後にホームセンターでどうかしら?」
ぷに!ぷにぷに!
「そ、そうか。それで、いいと思う・・・あ、綾乃・・・今日は服装も随分開放的だけど、何か良いことでもあったのか?」
「あったよ!今、最高の気分なの。さっき、可愛いって言ってくれたけど、気分が良いから可愛く見えるのかな?」
大きな猫目を細めて、綾乃が笑う。
「そうだな。今日の綾乃は、髪型も服装もとても可愛いけど、その笑顔は、ドキドキするくらい可愛いよ・・・」
「ねえ、もし三蜂さんがいなかったら、私のこと好きになった?」
「ああ、いやあ、それは・・・」
「もしもの話しよ。三蜂さんとの関係を邪魔するつもりはないの。三蜂さんは私の憧れの人でもあるのよ。心から応援しているの」
「そうか、ありがとう・・・そうだな、もし三蜂がいなかったら、僕は綾乃を好きになっていたと思うよ。こんなに可愛い綾乃を自分の手で幸せにできないのが残念だよ。綾乃には本当に素敵な人を見つけてほしいと思ってる」
「そう・・・素敵な人が見つかるまで、お友達でいてくれる?」
「ああ、もちろんだよ」
綾乃は笑顔を返すと、完全無欠の優等生にもどり、あっという間に買い物を終わらせた。時間に余裕ができたので、綾乃の家で品物を確認しながらお茶をすることになった。
「それでね。私は、そのお茶の香りがとても気に入っているんだけど、妹は好きじゃないって言うのよ。だから、八蜜くんに飲んでもらって評価を聞きたいの。八蜜くんは紅茶は好きかな?」
「嫌いじゃないよ。紅茶はイギリスの上品なものより、東南アジアの香りの強いものが好きかな?」
「そうなんだ。そのお茶はマレーシアのお土産だから気に入ってもらえるかも?」
綾乃は紅茶が好きらしく、紅茶の歴史などを語りながら歩き、自宅に着くと、早速、お湯を沸かして、お気に入りの紅茶をポットに入れると嬉しそうに言った。
「八蜜くん。ポットにお湯を注ぐから目を瞑ってくれる?目を瞑ったら私が良いと言うまで、目を開けちゃダメだよ!」
「ああ、分かった。綾乃のお気に入りの香りを堪能させてもらうよ」