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同じ名前の彼女
【片思い 恋愛小説】

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同じ名前の彼女-1

俺と同じ悠という名前をもつ彼女と出会ったのは俺たちが高3のゴールデンウィーク明けだった。『転入生を紹介する。早川悠だ。』その転入生は見るからに悪そうだった。身長は低め、髪はブロンドで緩くウェーブがかかって顔は綺麗めなギャルといったとこだろうか。制服のスカートは短く、ブレザーの胸ポケットには四角くタバコの形がついていた。『席は高瀬の隣だ。高瀬、手を上げてやれ。』そう担任は俺に言い教室を出ていった。彼女が席に来る途中、一人の女が彼女の通り道に足を出した。学級委員の中野だ。中野は見た目は彼女と真逆、性格は真面目。この高校にはこうゆうタイプの人間ばかりだった。中野がなぜ足を出したかはわからないが彼女は中野の足を踏みつけ歩き続けた。そんな彼女にクラス中の視線が集まった。『エライのが来ちまったな。』前の席の斉藤が俺に言った。『でも、今のは中野が悪いだろ。』そう答えると斜め前の根本が『あの子の肩もつ気?』と俺に言った。その時、ちょうど彼女が席についた。彼女を睨みつけ『あんたさぁ、ここ進学校なんだけど大学行く気あんの?』と根本は彼女に聞いた。『ない。』そう答えた彼女の声はハスキーだった。『だったら早いとこ辞めな。学校の恥だし授業にもついてけないと思うよ?』そう言う根本に『人は見た目じゃないよ。』となだめる斉藤を見ながら『ウチはあんたらが思ってる通りの人間さかい関わらんほうがええで。』と彼女は答え教室を出ていった。
昼休み、昼食を食べようと屋上へ行ったら笑い声が聞こえてきた。この声は加藤だ…他のクラスの我が校、唯一の不良。そして中学時代の俺の友人。加藤の隣には彼女がいた。『悠!こっち来いよ。』俺に気付いた加藤は言った。その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったので『戻るわ。』と教室に戻ろうとしたら『ほなウチも。』と彼女が俺に向かって走ってきた。『一緒に戻ろうや。』そう言う彼女は笑顔だった。ダークグリーンのカラコンがよく似合っていた。
教室に戻ってきた時、『まだいたんだ。』と数名の女は彼女に言った。『なに、あの子と仲良くしてんのよ。』と根本は席についた俺に言った。その時、数学の教師が入ってきたため根本は俺の返答を待たず前を向いた。彼女は既に眠っていた。『じゃあ、この問題は転入生に解いてもらうかな。』と言う教師の言葉で俺は寝ている彼女を揺すって起こした。『なんや?』『あの問題、前出て解けって。解けるか?』そう言うと彼女は『偏見やね。』とうっすら笑いダルそうに前に出て問題を解いた。彼女が戻る時、教師が『さすがだな。』と呟いたのが妙に気になった。彼女は席に戻ろうと歩いている時、中野がまた足を出した。半分寝ている彼女は気付いてないんじゃないかと思った瞬間、彼女は中野の足を蹴飛ばした。泣きそうになりながら硬直する中野の胸ぐらを掴み彼女は『女やったら股開かんと座り?幼稚な真似でウチをキレささんといて。』そう言い残し教室を出ていった。一瞬の出来事だった。彼女が出ていった後、中野は震えだした。しかし学校側は彼女には全く注意せず中野を強く叱りつけた。その日の帰り、ふと上を見上げると屋上で一人タバコを吸う暗い表情の彼女がいた。


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