昔話-3
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「覚えてるか? 真雪」新しい下着を穿き直した後、ケンジがベッドの端に座り、真雪の肩を抱いて言った。「おまえ、幼い龍の世話、ずっとしてくれてたよな」
真雪はシンプルなランジェリー姿でケンジの肩に寄りかかった。
「そうだったね。あたし、龍のこと、ほとんど弟だって思ってたから」
「実はあの時、俺、かなり悔しい思いをしてたんだぞ」
「え? ケンジおじが? どうして?」
「一人息子の龍をミカに独占させてたまるか、ってかいがいしくヤツの世話をしてた。授乳以外は全部俺がやってたようなもんだ」
「そんなに?」真雪はおかしそうに言った。
「その甲斐あって、龍は俺に相当なついてた」
「今もじゃん」
「ま、その時の努力の賜(たまもの)だな。でもな、龍が3つの時あたりから、おまえ、うちにしょっちゅう出入りするようになっただろ」ケンジは真雪を睨み付けた。
「そうだったっけ? あたしが小学校に上がったころ、かな?」
「そうだ。それから龍はあっさりおまえになついちまって、俺は孤独感に苛まれてた」
「大げさだよ、ケンジおじ」真雪は笑った。
「遊園地につれてってやる、って言った時、龍が『マユ姉ちゃんといっしょじゃなきゃいやだ。』って叫んだのを聞いて、俺はついに敗北した、って思ったね」
「ごめんね、おじさん。あたしが龍を奪っちゃったんだね」
「結局そのまま龍はおまえとつき合い始めて、毎夜のように抱き合って、愛し合って、結婚して、子どもまでもうけちまった。完敗だ」ケンジは笑った。
「じゃあ、今夜はお詫びの意味も込めて、あたしケンジおじにたっぷり抱かれてあげる」
「そうだな。ひとつ仕返ししてやるか、真雪に」ケンジはいたずらっぽく笑った。
「お手柔らかにね」