昔話-2
ミカは目を細めて龍を見つめた。「真唯も健吾も愛情たっぷりで育ってるじゃないか。おまえと真雪が上手に子育てしてる証拠だよ」
「どうかな。まだまだ手探りだよ。まだ4歳だし、双子だし。それに母さんや父さんが一緒に暮らしてくれてる、ってことは大きいと思うよ。感謝してる。ありがとう」
「孫はまた格別なんだ。でもそれも若い頃は思い及びもしなかったことだけどね」ミカはウィンクした。
「ケニー叔父さんとこで迷惑かけてないかな、あの二人……」
「ケネスもマユミも日頃からめちゃめちゃ二人を可愛がってくれてるじゃないか。きっと喜んで相手してくれてるよ」
「健吾も真唯も幸せ者だね。でも、駆栗鼠(クリス)ちゃんと瑠偉(ルイ)くんもいるだろ? 二人にも手が掛かるんじゃない?」
「そうだな、まだ瑠偉は1歳だから春菜がつきっきりだろうけど、駆栗鼠は2歳、健吾や真唯でももう十分相手できる歳だよ」
「そうだといいけどね」龍は少し困ったような顔をした。
真雪の実家シンプソン家の、彼女の双子の兄健太郎とその妻春菜の間には、今年2歳になる女の子駆栗鼠(クリス)と1歳になる瑠偉(ルイ)の年子の姉弟が生まれていた。
「瑠偉くん、1歳だったら、まだおっぱい飲んでるよね」龍はまたミカの乳房に顔を埋めた。
「そうそう、」ミカが笑いをこらえながら言った。「おまえがさ、あたしのおっぱい飲んでると、ケンジもやってきて、もう片方のおっぱいを咥えて吸ってた」
「えー? ホントに?」龍は驚いて顔を上げた。
「結局あの人も、おまえに嫉妬してたんだよ。愛する妻をおまえにかすめ取られたわけだからね」
「笑える! でも、今のこの状態も同じようなものだね。俺が母さんを寝取ってる」
「あはは、そうだね。でも今回はお互い様だろ。だって、代わりにおまえの最愛の妻をケンジが寝取っているわけだからね」
「それもそうだ」
ミカと龍は笑い合った。
「んー、昔話で身体の火照りが冷めちまったな、龍。ごめんな」
「気にしないで。俺もいい話聞かせてもらって、ますます母さんが好きになったよ」
「そうか。じゃあ、もう一度、盛り上がるか、二人で」
「そうですね、母上」