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Betula grossa
【ラブコメ 官能小説】

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告白......-4

その日から亜梨紗はカズ姉の店に来てピアノを弾いていた。翔子さんはコンサートで忙しく亜梨紗の相手をしていられなかった事もあったが....時間が許す限りピアノを弾いていた。カズ姉はそれを笑顔で聞いていた。
「カズ姉?亜梨紗のピアノって......」
「一言で言えば天才....その言葉は亜梨紗ちゃんにこそ相応しいわ!」
俺は嬉しそうな顔をしていたのだろう....
「嬉しそうね?」
「それは....あたりまえっていうか......」
「でもね!才能だけでやっていける世界でもないわよ!どの世界でも一緒だけど....本人の努力と....そして環境....あとは運....チャンスを逃さずに掴んでいく事が出来るか....世界の一握りに入るって事はそういう事よ......ボクシングで頂点を目指していたあんたならわかっていると思うけど....」
「わかっているよ......そんな事は......亜梨紗のためになるなら例え離れ離れになったとしてもね......」
「純?」
「翔子さんに聞いたんだ......亜梨紗は卒業するとすぐにウィーンに戻るって......亜梨紗は言い難いのかまだ言ってくれないけどね......」
「純?いいの?」
「正直言って....離れ離れになるのは辛いよ......でも....それが亜梨紗のためになるなら......俺の亜梨紗への気持ちは変わらないし....亜梨紗の事も信じられるから......」
「ハイハイごちそう様!独身女にはキツいセリフね!」
「独身四じゅ....」
「まだまだ三十代よ!」
カズ姉は話の途中で俺の足を思い切り踏みつけた。

バイトが終わって店の外に出ると亜梨紗が待っていてくれた。
「お疲れ様!」
「ああ疲れた......翔子さんの予約のおかげで徹夜だったからな......」
俺のザッハトルテを気に入ってくれた翔子さんがコンサートスタッフへの差し入れのために予約を入れてくれたのだった。一人で作るには泣きたくなるくらいの....正直、亜梨紗の叔母さんでなかったら断っていた......
「ゴメン......」
「亜梨紗が謝る事じゃないよ!でも..少しは感謝してくれよ!亜梨紗の叔母さんでなかったら断っていたんだからな!」
「それ?サービス業の店員が言うセリフ?」
「あっ!カズ姉には内緒にして!お願い!」
両手を合わせて拝んでいると
「どうしようかな?」
亜梨紗は不気味に笑っていた。
「葛城君はもう亜梨紗さんの尻に敷かれているの?」
後ろから声をかけられた。振り返ると姫川さんが立っていた。
「えっ?どうしてここが?」
「香澄さんに聞いたの....昨日、笑美ちゃんとこのお店に来て驚いちゃった!チョコを作っていたの葛城君だったんだね!」
「うん..まぁ....」
「そんな葛城君に渡すのは恥ずかしいんだけど......」
「あっ!アタシ向こうに....」
亜梨紗が姫川さんの言葉を遮るように言うと
「いいわよ!気にしないで!義理チョコを渡すだけたから!」
「えっ?でも....」
「本当に深く考えないで!父の会社の件で葛城君には本当にお世話になったから!」
「それって....これか?」
亜梨紗がスマホの写真を見せた。
「亜梨紗さん知ってたの?」
「ん?まあな!」
「亜梨紗!わざわざ見せなくても....」
俺が照れていると
「あのね!こんなのもあるんだよ!」
姫川さんはデジカメを取り出して亜梨紗に見せ始めた。
「ちょっと!姫川さん?」
姫川さんを止めようとすると
「別にいいだろ!」
亜梨紗は興味深そうに見ていた。少しの間、二人で盛り上がった後
「それじゃぁね!葛城君!チョコ二人で食べてね!」
姫川さんは少しぎこちない笑顔を見せて帰って行った。


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