告白......-3
「えっ?」
「亜梨紗ちゃんさえ良ければ!私、聞いてみたいな!亜梨紗ちゃんのピアノ!」
「それじゃ......」
「弾く気満々だな!亜梨紗!」
「五月蝿い!」
純を睨んだ後で
「何を弾けばいいんですか?」
「亜梨紗ちゃんが好きな曲ならなんでもいいわよ!」
「そうですか......」
私は何を弾けばいいのか迷った。ケーキ屋でクラシックなんてあわない気がしたからだ....仕方なく何年か前に流行った歌を中心に馴染みのある曲を弾いた。完全に弾ける曲は多くないが、耳コピに適当なアレンジを加えて弾いていた。和紗さんがなんて思うか心配だったが、笑顔を崩さなかったので合格点はもらえたのだろう....
「亜梨紗ちゃんありがとう....お店の雰囲気を考えてくれて!でもそれじゃ亜梨紗ちゃんの練習にはならないでしょ!気にしないでいいのよ!」
「えっ?でも....」
「私が聞きたいのはそんな曲じゃないわ!あなたの本気を聞かせて!」
そう言われれば仕方なかった....今、出来る全力を見せるしかなかった....まだ練習を始めて間もない叔母に出された課題曲....何度も弾いているのに同じ場所で間違えてしまう....やはり今も同じだった....
「亜梨紗ちゃん?さっきから同じ場所で止まっているけど?」
「そうなんです....叔母と同じように弾きたくて何度もトライするんですけど....」
「亜梨紗ちゃんが翔子になる必要はないんじゃない?いつかは翔子を越えたいんでしょ?だったらこんな解釈もあるわよ!」
和紗さんは私と代わってピアノを弾き始めた。楽譜もないのに、叔母とは違う解釈で完璧に弾いていた....
「どうかな?」
和紗さんのピアノに聞き入っていた私は声をかけられて我に返った。
「和紗さんのピアノ....初めて聞いたけど....凄いです....才能がないなんてウソじゃないですか!」
「お世辞はいいから弾いてみて!」
「はい!」
和紗さんのピアノを聞いた後で弾いてみるとさっきまでとはウソのように間違える事がなかった。
「翔子を意識するのもいいけど....あなたはあなた!自分の色を出す事も覚えたほうがいいわ!ピアノで食べていきたいならね!でも出し過ぎると....それを理解してもらえないと私のようになってしまうけどね....」
「和紗さん?」
「私の事はいいわね....でも亜梨紗ちゃんはまだ若いんだからいろんな事にチャレンジして自分の可能性を狭めないでね!」
「はい!ありがとうございます!」
和紗さんに何があったのかはわからないが、叔母が言ったように和紗さんには才能があった....私にそれがあるかはわからないが、和紗さんの助言は確かに参考になった。