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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第5章 教育-33

 記録によれば九条コーポレーションは、ここ数年のうちに、新薬開発の名目で様々な医療物資を輸入している。実際厚労省に対して五件の新薬承認申請が出されているが、調査部が同社の密貿易に気付き、その驚くべき実態を把握すると、南米から大量の麻薬が持ち込まれている事が発覚した。しかもそれは日本市場に流されることなく密蔵され、昨年から徐々に鳳学院へと運びこまれていたのだ。
 また興味深い情報として、四年前、ロシアからヤーコフ・アバルキン博士なる脳神経外科学の権威が密かに亡命し、匿われていることも判明。私はこのことから、九条コーポレーションが新薬開発に携わる一方、麻薬の開発にも手を染めていることに思い至った。それが会社ぐるみの思惑なのか、それとも九条直哉個人の暴走なのかはわからないが、麻薬の力を持って、学院の生徒を次々懐柔していると結論付けた。
 いかに鳳学院が生徒の自主性を重んじているとはいえ、学内に麻薬が蔓延していたとなれば、理事長とて責任の追及は免れまい。その累が自身のみならず西園寺グループ全体に及ぶとあれば、事件のもみ消しを図るとも考えられる。そのような事態を避けるためにも、私は直接理事長との対話を求めた。
 「西園寺理事長、この度の不祥事には私も責任を感じております。この件の対処に関しては、綾小路家もお力添えすることをお約束致しますわ。ですが、被害が卒業生まで及ぶに至っては、内々に処理するわけにも参りません。ここは学院の名誉を守るためにも、速やかなる対処を求めます」
 「とおっしゃると、御前もこのことを御存知で?」
 「いえ、本件は私の独断で調査を進め、お祖父様にはまだ報告していません。もっとも、聡いお祖父様のこと。いかに隠し立てしたとて、いずれはお耳に入るでしょう」
 もはや他に選択肢はないと観念したのか、理事長は居住まいを正すと、学院の長として相応しい、毅然とした態度をとる。
 「いいでしょう。では、学内に麻薬を持ち込んだ首謀者、九条直哉。ならびにその流布に加担した生徒は即刻退学、然るべき法的機関に処分を委ねます。また、当方の医師、今泉先生をはじめ、犯罪に関った職員も同様に対処。麻薬の捜査に関しては警察機関への協力を仰ぎ、被害者の治療には西園寺グループが全力を持って臨みます」
 「賢明なご判断、痛み入ります」
 「それと、私の辞任は致し方ありませんが、鳳学院の経営には今後も西園寺グループが当たらせて頂きたい。そのことを、綾小路グループの名代として、ご確約頂けますか?」
 「私にそこまでの権限はございません。ですが、その要望を叶えるべく、お祖父様にかけあうことはお約束致しますわ」
 その答えに満足したのか。理事長は壁に掛けられた歴代理事長の肖像に目をやり、大きく息を吐いた。それは長年の苦労を感じさせる、重く、深い溜め息だった。
 「ところで、九条一派を一網打尽にすべく、私の方から提案がございます」
 もはや諦観の表情を浮かべた理事長は、返事の代わりに目で先を促す。私は今朝方届けられた書状、見ようによっては挑戦状ともとれる招待状をテーブルの上に差し出す。


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