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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第5章 教育-19

 強がってそう言うも、声は震えていた。だって、ダクトから出た瞬間に襲われたことを考えれば、九条の言うことが本当だとしか思えない。だけど、こっちだっていつ誰に襲われるかわからない状況にいたんだから、尾行や監視には細心の注意を払っていたのよ。見張られてたなんて信じられないわ。
 うろたえるあたしの反応をひとしきり楽しむと、九条は大きく手を打ち鳴らす。それが合図であったのか、再び背後でドアの開く音がし、誰かが入ってくるようだった。コツコツと足音を響かせ、鳳の制服を着た女生徒が姿を現すと、あたしは息が止まりそうになるほどの衝撃を受けた。
 「そんなことありませんわ、沙羅さん。だって私が直哉様に報告していましたもの」
 いつもと変わらぬ口調で、中学からの親友大河内紫苑は、おっとりした笑顔を浮かべていた。
 急に世界がぐらぐら揺れ始め、ひどい眩暈に襲われる。駄目よ、気をしっかり持たなきゃ。でも目の前の現実を、あたしはどうしても受け入れられないでいた。
 九条が学院の生徒を操っていることを、あたしは知ってるはずだった。その証拠となるビデオも見たし、医務室が怪しいこともわかっていた。だけど、やはりどこかで現実として受け止めていなかったのかもしれない。そう、まるでテレビや映画の中の出来事みたいに。
 頭の中の冷静な部分が、紫苑はいつの間にか九条に洗脳され、あたしの動向を伝えていたのよ、と言うが、今まで友人として過ごしてきた時間が、嘘よ、そんなのありえないと叫ぶ。理性と感情がせめぎ合う中、今まで経験したことのないパニックに見舞われる。
 当の紫苑は、縛られているあたしを見ても何ら反応を示さず、九条の傍まで歩み寄ると、慎ましげに控える。紫苑の様子はいつもと変わらない。でもそれは、彼女が間違いなく洗脳されたと言うことを示している。それでも現実として受け止められないでいると、堪え切れず涙が溢れてきた。
 「そんな‥、嘘よ‥」
 あたしの小さな呟きは、九条の高笑いによってかき消された。彼は本当に愉快そうに笑うと、再びあたしの髪を掴み上げ、高慢な本性を露わに顔を近づけてくる。
 「ハハハ、そうだ、その顔が見たかったんだぁ。どうだ、信頼していた者に裏切られた気分は?」
 あたしはショックのあまり言葉もなかった。一体こいつは何を笑ってるんだろう、何がそんなにおかしいの?
 驚きも冷めやらぬ内に、彼は突然身をひるがえすと、踊るような足取りでカーテンで仕切られた窓辺に向かい、満面にやにや笑いを浮かべながら、こちらを振り返る。
 「いいぞぉ、ではもう一つ面白いものを見せてやろう。せいぜい俺を楽しませてくれよ」
 バッとカーテンが開かれ、隣の部屋の様子が目に飛び込んでくる。そこに広がる光景に、あたしは悲鳴ともつかぬ声で叫んでいた。
 「瀬里奈!」
 そこは、ここと同じくらいの広さの部屋だったが、様相は全然異なっていた。例えるなら、今いる部屋が研究室とすれば、隣の部屋は実験室だろうか。幾つかの制御装置やコードの束が目につくが、中央に据えられたマッサージチェアの様な装置が、この部屋の主役らしかった。
 そこに、瀬里奈は座っていた。虚ろな視線を宙に投げ、半裸に近い姿で。


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