第5章 教育-13
「ふ〜ん、やっぱり眼鏡外したほうがいい女だな」
顎に手をかけ顔を覗き込みながら、どら息子は嘲るような口調で言う。インテリ眼鏡は無抵抗ながらも、その表情はあくまで冷徹。どら息子はそれが気に入らないようで、彼女の後ろに回り込むと、その華奢な身体を抱きすくめる。
「お前、何か九条様に嫌われることでもしたんだろ?」
「‥はい、私は失態を犯し、直哉様の不興を買いました。その罰として、貴方がたのお相手を努めるよう言い渡されました」
少し上ずった声が答えるのを聞き、あたしは心臓がバクバク言いだすのを覚える。男の手が制服の上から彼女の身体を撫で擦ると、能面のような白い顔に緊張が走る。
「言ってくれるじゃねえか、じゃあお前にはたっぷりご奉仕に励んでもらうぜ」
どら息子は彼女の身体を放すと、乱暴に肩を押し、三人の真ん中に立たせる。獰猛な男達に囲まれたインテリ眼鏡は、やけにか弱く見えた。
「それじゃあ、まずはストリップをしてもらおうか」
偉そうに腕を組み、どら息子は尊大な口調で命令する。興奮したように坊ちゃんが奇声を上げ、狐顔は口笛を吹くが、インテリ眼鏡は顔色一つ変えることなく、短い返事で了承し、実行に移った。
ベストのボタンに指をかけ、躊躇う様子も見せずに脱ぎ捨てると、男達の間から下卑た笑いが漏れる。その様子をつぶさに眺めながら、あたしは自分の考え違いを悔いていた。
今まであたしは、インテリ眼鏡は九条の仲間か、さもなくば無関係のどちらかだと思っていた。だが今、目の当たりにしている辱めは、そのどちらでもないことを示している。彼女は新城先輩同様、九条に洗脳され、利用されていたのだ。
はたして九条に操られると、なんでも言いなりになってしまうのか。男達の前でスカートとブラウスを脱ぎ捨てたインテリ眼鏡は、野獣のような視線の前に下着姿をさらす。
「あっ、ソックスは履いたままでいいぜ、その方がそそるから」
狐顔の言葉に、靴下を脱ごうとしていた彼女の手が止まる。どら息子が首を縦に振るのを認めると、その手はブラジャーへ移り、次いでパンティへと移った。
黒いソックスだけを残したまま、男達の前に白い裸身をさらした姿は、飢狼の中に放り込まれた哀れな仔羊だった。どら息子はいやらしい笑みを浮かべたまま、インテリ眼鏡の前に立つと、股間を指さす。
「それじゃ、俺たち全員にご奉仕してもらうとするか。‥その可愛いお口でなぁ」
カッと頭に血が上り、あたしはこの場に飛び出したい衝動に襲われる。男の子が頭の中でいやらしいこと考えているのは承知の上だが、ここまで露骨に浅ましいものを見せつけられると許せない。この狭いダクトを飛び出して、スタンガンを振り回せば、三人位何とかなるはずよ!
しかし現実的な考えが、その暴挙に歯止めをかける。映画の主人公のように、ヒロインのピンチにひらりと飛び出せるはずもなく、音でも立てようものならたちまち見つかって、文字通り袋の鼠となるのがオチだわ。よしんばダクトを抜け出して部屋に飛び込めたとしても、男三人相手にどこまで戦えるか怪しいものだ。今のあたしにできるのは、この凌辱をビデオに収め、売春倶楽部を壊滅させることだけ。だがそれは可愛そうなインテリ眼鏡が、男達の嬲り者にされるのを傍観するに他ならなかった。