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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第5章 教育-10

 散々言われてきた忠告を忘れて、あたしは後者を選択した。スクープをものにするのにリスクは付き物。ここで臆病風に吹かれたら、一生後悔することになるわ。
 そう意気込んでエレベーターに乗り込む決意をしたのだが、エレベーターの制御装置はコントローラー式で、しかも暗証番号の入力が必要だった。当然と言えば当然のセキュリティだが、それで暗証番号がわかるはずもない。いきなり出足を挫かれてしまったけど、こんなことで諦めるわけにもいかない。う〜ん、紫苑ならこれ解析できないかな。
 駄目駄目、やっぱり駄目。紫苑に相談したら、絶対引きとめられるに決まってる。首をぶんぶん振って、その考えを打ち消すと、ちょうど名案が閃いた。そうよ、エレベーターがあるってことは‥
 あたしは部屋をぐるっと見渡し、他の配電盤を開いてみる。隣のは本当に配電盤だったけど、二つ目は違った。思った通り、地下へ続く階段を見つけて、笑みがこぼれる。地下建築物の構造上、階段がないなんてあり得ないのだ。自分の頭の冴えに感心しながら、詰めの準備を進める。
 九条の部屋に仕掛けた盗聴機は、地下まで電波を届けてくれないので、最後にタブレットPCで状況を確認する。相変わらずテレビの音が聞こえてき、それに混じって笑い声も聞こえてくるから、彼が自室にいるのは間違いない。もう一つ、保険として瀬里奈と紫苑に売春組織のアジトを見つけたことと、一時間して戻らなければ、この場所をしおりんと警察に連絡するようメールを送る。もちろん無事に戻ってくるつもりではいるけど、引きとめられると厄介だから、スマホの電源をオフにして行動開始。あたしはいよいよ、悪の巣窟への一歩を踏み出した。
 古めかしい石造りの階段をビル二階分ほど降りただろうか。天井に照明設備はあるようだけど、さすがにつけるわけにもいかず、タブレットPCのライトを明かり代わりに慎重に下っていく。それにしても相当古い施設のようだけど、一体ここは何なのかな。湿っぽい空気を嗅ぎながら自問するも、答えは意外なところから浮かび上がってきた。
 ライトに照らされた階段の壁に『十米』と記されているのを見て、あたしは閃いた。くしくも新聞記事作成の為に見ていた、鳳学院の昔の資料に答えはあったのだ。
 きっと防空壕ね。記録によると、当時から要人の子弟が多い学院なだけに、戦時中、空襲に備えて地下二十メートルの深さに頑丈な防空壕を作ったとある。確か写真付きで記事に載せた覚えがあるけど、歴史も少しは役に立つのね。終戦とともに閉鎖されたとあったが、おそらく九条がその入り口を見つけ、売春組織のアジトとして使っているのだろう。そう言えば文化棟って戦後に新築されたって言ってたけど、まさか防空壕の上に建っていたとは驚きだわ。
 感覚としてビル五階分ほど下った頃に、ようやく出口が見えてきた。隙間から明かりの洩れる鉄製のドアに、念の為コンクリートマイクをあてて音を拾うが、どうやら誰もいないみたい。それでも音を立てないよう用心して開くと、そこには驚きの光景が広がっていた。
 防空壕と言うからだだっ広い広間を想像してたのだが、明るい照明に照らされたそこは、まるでホテルを思わせるホールだった。白を基調とした近代的な内装が施され、明らかに戦後、それも最近工事が入ったことを窺わせる。しかし、いくらなんでもこんな大工事、秘密裏にできるはずが‥


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