005 最初の犠牲者・2-2
「ならばここで死ね! 筒井惣子朗ぉおおおおお!!」
獲物を射る鷹のような血走った瞳で、ベアトリーチェは鼻をふんと鳴らすと、その顔面を憎々しげに歪め叫んだ。
「シエスタ姉妹、ぶっ放せええええ!」
「よんじゅうご了解、射撃っ!」
「にひっ、よんいちまる射撃!」
最後尾に連なっていた兵士の二人が待ってましたと謂わんばかりに身を踏み出し、それぞれが銃器を構えると、その鉾先がなんの躊躇もなく火花を散らした。撃ち抜かれた惣子朗の身体が衝撃で後ろに倒れるのと、赤黒い血液が室内を飛び交うのと、生徒たちが悲鳴を上げるのはほぼ同時だった。
誰かが、踊るように傾いて行く惣子朗の身体を受け止めるように、遠くで腕を差し出した。手を伸ばして駆け寄ろうとしたその女子生徒は、新たに狙われた銃器の威嚇で動けないクラスメイトたちの恐怖を物ともせず、ひとり、ただただ必死に手を差し伸べようとしていた。悲鳴を帯びた痛々しい涙声が、騒然とする教室の空気を揺らした。
「筒井くん!」
「そやつもくれてやろうぞ!」
「だぶるおー了解、射撃であります!」
また新たな火花を散らし、七瀬和華(女子十一番)の身体が呆気なく弾け飛んだ。
空太はそれを切り取られた映像の一部のように眺める。モノクロで、スローモーションみたいな、現実味のない感覚だった。なにが起きているのかよくわからない。目の前で二人のクラスメイトが、自分によくしてくれた優しい二人のクラスメイトが、鮮血で付近を染め上げ物言わぬ亡骸となって、倒れていた。
それでようやく、自分たち宍銀学園三年B組が、国の戦闘シュミレーションと称した残酷な死のゲームに参加させられる現実を、認めたのだった。
男子十番 筒井惣子朗──死亡
女子十一番 七瀬和華──死亡
【残り:四十二名】