どこにでもある ただ ちいさなおはなし1-1
※この作品をお読み頂く前に前作の「どこにでもないちいさなおはなし」をお読みになられる事をお勧めいたします※
花は春を告げる。
永い永い冬が終わり、段々と雪が溶けて川に流れ、薄っすら濡れた大地が一番初めに顔を出す。
やがて蕾が膨らみ色とりどりの花を咲かせると、周りの木々も安心して青い葉を伸ばし始める。
人々は毛皮で作られたコートや毛を糸にして編んだ服を脱ぎ、縮こまっていた体を思い切り伸ばす。
それが、そう、いつもの冬の終わりのはずだった。
人々は気付き始める。
指を折り数え、あるいは少なくってきた食料の数を見て。
冬が長すぎやしないかと。
かつて小さなけれど大きな冒険をした彼らはすでにこの世から旅立っていた。
元々彼らが何処から来て何処にいてどうなったかも分からない人々の心に小さく小さく疑問が浮かぶ。
本当にずっと前からこうだったんだろうか。
何か、もっと……こう……。