どこにでもある ただ ちいさなおはなし1-30
「親愛なる私の子孫へ
この手紙が開かれる事が無い事を私あh位の手います。
私は今、自分の命が長くないことを悟りました。
今までの記憶と力と仲間をこの箱に封印し、もし、世界がまた危機に陥ることがあれば、その時はそれを食い止めるべく動くためです。
あなたには何の事かさっぱり分からないでしょう。
この箱が見つかった時、それが世界の危機を救う為の時。
私はきっと鏡の中に映っているはずです。
あなたの力がないと私は何も出来ません。
どうかその時は私達にかつてそうしたように世界の責任を取るために力を貸して下さい。
あなたはただこの箱に彫られていた紋章と同じ紋章のある指輪をはめて私と手を合わせてくれるだけで良いのです。
だから、お願い。
私に力を貸して下さい。
第3468代目 イヴ・ネーサ」
リリアがよくそれを見てみるとそれには涙の跡がいくつもあった。
「何これ、意味、わかんない」
背中を冷や汗が流れる。
心臓はさっきよりも早く鼓動を打ち、頭がずきずきと痛む。
鏡を振り返ると金髪の少女は今にも泣きそうな顔をしてこっちを見ていた。
『貴方が最後の希望なの』
また、聞こえる。
『もう、動き始めてしまった。私達無しでは彼らは何も出来ない。それなのに、彼らは起きてしまう。それはとても残酷なことなの。お願い指輪をはめてこっちへ来て』
彼ら?仲間のこと?
どこの誰かも分からないのに?
手紙を置き指輪を見つめる。
『あなたの家族を殺したのもきっと世界がこうなった原因に関係がある』
少女がとても言いにくそうに呟いた。
家族という言葉にリリアが反応し、きっと眉を吊り上げて鏡を見る。
「あんたがいたから?!私の家族が殺されたの?!」
指輪を握り締め鏡の前まで歩く。
ドンと拳を握り締めて鏡を叩く。
少女は肩を震わせて怯えていた。
『そう、かも……知れない』
「それなのに協力しろって?本当にそんな風にいうの!!」
目から悔しくて涙が零れた。
『ごめんなさい。でも、今のままじゃ私には何も出来ない』
その時少女の目から金色の涙が零れた。
ドンドンと鏡を叩くたびに姿が霞んでいく。
「こんなのって、こんなのって、無いよ!イヴって何っ」
二人とぼろぼろ涙を零した。
リリアは手がどんどん熱くなるのを感じた。
家族が死んで、何もかも失って、それでこんな事になって、どうしろと言うのだ。
『貴方を助けてあげるから。大事な私の仲間や大切な人に必ず会えるから。一人になんてしないから。だから、お願い。指輪をはめて私の手と貴方の手を合わせて』
少女が消えそうになりながら叫ぶ。
自分が拒否すればするほど、この少女は消えるんだろう。
そうしたら、本当にひとりぼっちになってしまう。
リリアは歯を食いしばった。
左手の薬指に指輪をはめる。
「あなたがひとつでも嘘をついたら私は自分で自分の命を終わらせる。これが唯一の条件よ。あなたなんて大嫌い!」
ありったけの大声で叫んで鏡に手を合わせた。
手と手のあいだから金色の光が惜しげもなく溢れる。
リリアは目を開けてられなくて、瞼を閉じた。
おやすみ、リリア。
泣き虫で生意気でわがままで。
私の大事な子孫。
大好きよ。
リリアの頭の中にそう声が聞こえて、目を開けようとした瞬間。
彼女の意識はそこで途切れた。